『ルート350』 講談社文庫
古川日出男の『ルート350』を読了しました。「物語」と表現しても良いし、本書における表現にならって「レプリカ」と読んでもいいわけですが、そこに立ち上がってくるものの助けを借りながら、あるいはそれに対して抗いながら、自らの生を進んでいく(主に)少年や少女の姿を描いた作品集です。
冒頭に置かれた「お前のことは忘れていないよバッハ」から始まって、予想外の場所に連れて行かれる感覚を味わうことができます。本書の最後に収録されたごく短い作品、表題作でもある「ルート350」を読むに至って、この奇妙な短編群が再び説得力を持って私たちの前に立ち現れてくるという仕掛けになっているようです。
【満足度】★★★★☆