文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

W・ジェイムズ『プラグマティズム』

W・ジェイムズ 桝田啓三郎訳

プラグマティズム』 岩波文庫

 

W・ジェイムズ(1842-1910)の『プラグマティズム』を読了しました。「プラグマティズム」という言葉の創始者はパースだったとすれば、それを人口に膾炙するものとしたのはウィリアム・ジェイムズだったといえます。本書は1906年と1907年にボストンとニューヨークで行われた講演を出版したもので、一般大衆とはいえないまでも、必ずしも狭い意味での専門家とはいえない聴衆に向けて、「プラグマティズム」とは何かということを解説した書物になります。

 

「真理」と「有用性」を同値してみせるジェイムズの論述は、いささか粗雑に思えてしまうのですが、そのことに対する反論も織り込み済みであるジェイムズは、「私たちの現実生活においていかなる具体的な差異を生み出すのか」というプラグマティズムのテーゼに訴えて、それを真理と非真理の試金石とすることで、「いいようもなくつまらぬものである」伝統的な真理の定義に対抗しようと試みます。ジェイムズは美文家だと思いますが、哲学的な論述としては少し精緻さに欠けていて、なかなか読解が大変なのですが…

 

【満足度】★★★☆☆