文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

冨田恭彦『詩としての哲学 ニーチェ・ハイデッガー・ローティ』

冨田恭彦

『詩としての哲学 ニーチェハイデッガー・ローティ』 講談社選書メチエ

 

冨田恭彦の『詩としての哲学 ニーチェハイデッガー・ローティ』を読了しました。定まった事実や真理なるものを希求するプラトン主義的な哲学に対して、想像力を通じた開かれた思考からなる「詩としての哲学」を掲げるローティの主張を主題として、エマソンニーチェハイデガーといった思想の系譜を辿りながら、その輪郭を描き出そうというのが本書の狙いとなっています。

 

本書の第一部ではこのような「詩としての哲学」の系譜が素描される一方で、本書の第二部においては、クワインデイヴィドソン、そして著者の専門とするロックの哲学を範にとって、「詩としての哲学」という主張の「哲学的な」土台が補強されます。そして第三部においては、「詩としての哲学」に対する批判者が見落としがちな「仮説的思考」の重要性が近代哲学の歴史を辿りなおすかたちで説かれます。「詩としての哲学」の内実を豊かに展開したのが本書の内容であるというよりは、これまでの哲学が取りこぼしてしまったものとしての描かれ方が前面に出ている印象で、少し物足りなさも残ります。

 

【満足度】★★★☆☆