文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

ルートヴィヒ・ヴィトゲンシュタイン『哲学探究』

ルートヴィヒ・ヴィトゲンシュタイン 丘沢静也役

哲学探究』 岩波書店

 

ルートヴィヒ・ヴィトゲンシュタインの『哲学探究』を読了しました。特異な思想家であるウィトゲンシュタインの「後期」の代表的著作が本書『哲学探究』です。しかし、本書はあくまでもウィトゲンシュタインの死後にまとめられた遺稿集であり、生前に刊行されたものではありません。そうした成立事情は、後期ウィトゲンシュタイン思想の独特の性格や著述方法も相まって、本書の体系的な理解に決して低くはないハードルを課しています。

 

本書はドイツ文学者である丘沢氏による翻訳ですが、正直なところ、西洋哲学研究の文脈のもとでウィトゲンシュタインの「哲学」にアクセスしようとする人には、あまりお薦めできない翻訳になっているように思います。本書の冒頭には、野家啓一氏の手からなる哲学的な側面の解説が収録されており、野家氏は本書の校閲も行ったようなのですが、訳者の丘沢氏が自身の判断によりそれに従わなかった部分も多々あった旨が、本書の訳者あとがきで述べられています。個人的にはそれが残念でならないのですが…

 

【満足度】★☆☆☆☆