W・G・ゼーバルト 鈴木仁子訳
W・G・ゼーバルト(1944-2001)の『アウステルリッツ』を読了しました。ずっと読んでみたいと思っていた作品なのですが、このたび新装版が刊行されることになり、嬉しい限りです。
本書の内容をかなり単純に要約すると、「私」がベルギーのアントワープで出会った建築史家のアウステルリッツが自身の半生について語る様を静かな筆致で描いた作品ということになります。ただ、そのナラティブと並行するかたちで本書には様々な写真や図画が挿入されていて、それらの視覚的要素がアウステルリッツの語りと一体になるかたちで何ともいえない読書体験を呼び起こします。小説ではあるのですが、エッセイとも紀行文とも取れるような不思議ではありますが魅力的な作品で、ファンが多いというのもうなずけます。
【満足度】★★★★☆