『わたしを離さないで』 ハヤカワ文庫
カズオ・イシグロの『わたしを離さないで』を読了しました。昔ハードカバーで翻訳が出たときに読んで以来、何年ぶりかの再読となりました。当時はミステリーの文脈でも話題になった作品で、そういえばテレビドラマ化もされていましたし(見てはいないですが)、イシグロの作品の中でも最も有名な作品のひとつといえるかもしれません。
謎が解けることのカタルシスも本書の魅力の一つではあるのでしょうが、今回再読してあらためて気付かされたのは視点の多様性とでも言うべきものでした。語り手である主人公キャシーの見た世界、親友のトミーが見た世界、ルースが見た世界、そして保護官である先生が見た世界。特に本書のタイトルのもとになった作中のエピソードには、この多様性が顕著に現れているような気がします。
【満足度】★★★★☆