『匿名芸術家』 講談社
青木淳悟の『匿名芸術家』を読了しました。「四十日と四十夜のメルヘン」で新潮新人賞を受賞してデビューした青木氏ですが、本作はその前日譚というか創作秘話のようなものを、いつもの如く奇妙な小説仕立てで描いてみせた作品です。小説を書くことを志す私(田中南・女性)と画家志望の彼とのやり取りや、時折変な方向に脱線していく情景描写などを挟みながら、匿名時代の芸術家の日常が描かれています。
本書の後半には私(田中南)が書いた「四十日と四十夜のメルヘン」が収録されていて、それはかつて私が新潮文庫で読んだ青木淳悟作の同作品とは細部が微妙に異なっているようです。作者のデビュー作はひとつの創作活動として本書において相対化されています。
【満足度】★★★☆☆