文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

G・ガルシア=マルケス『悪い時 他9篇』

G・ガルシア=マルケス 高見英一他訳

『悪い時 他9篇』 新潮社

 

G・ガルシア=マルケス(1928-2014)の『悪い時 他9篇』を読了しました。1958年から1962年にかけて発表された中短編を収録した作品集です。「大佐に手紙は来ない」、「ママ・グランデの葬儀」などの短編が有名どころで、表題作である中篇作品「悪い時」では、他の短編作品の語り手や視点人物たちも登場しながら、ある町における不穏な時の流れが群像劇のかたちで描かれています。

 

「悪い時」における「独裁」の表現の仕方は、ガルシア=マルケスが『族長の秋』などで描いてみせた独裁者の姿とはまた別のものになっていて、大変興味深く読むことができました。クールな文体で、初期のファンタジックな語り口とも、この作品の5年後に書かれる『百年の孤独』の魔術的な叙述とも異なっていて、これはこれで良いですね。

 

【満足度】★★★★☆