文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

ジョナサン・サフラン・フォア『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』

ジョナサン・サフラン・フォア 近藤隆文訳

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』 NHK出版

 

ジョナサン・サフラン・フォア(1977-)の『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』を読了しました。“Extremely Loud and Incredibly Close”という原タイトルを直訳した長い長い邦題が印象的な本書ですが、「ヴィジュアル・ライティング」と呼ばれる手法を駆使した写真や図版を使っての表現、場合によってはメタフィクショナルでもある手法もユニークです。

 

物語は9.11で父親を亡くした少年オスカーの「冒険」を主軸にして、視覚を失ったオスカーの祖父による手記や、オスカーの祖母の視点からなる家族の物語が挿入されながら展開されていきます。本書の最後に登場する連続写真によるフリップブックは、想像力による現実のコラージュを通じて、現実の先へと向かおうとする意思を示すもので、本書の主題とも相まって見事な表現になっています。

 

【満足度】★★★★☆