文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

ウンベルト・エーコ『バウドリーノ』

ウンベルト・エーコ 堤康徳訳

『バウドリーノ』 岩波文庫

 

ウンベルト・エーコ(1932-2016)の『バウドリーノ』を読了しました。イタリアの記号学者・哲学者であるエーコは、映画化もされたベストセラー小説の作家としてもよく知られています。中世ヨーロッパの修道院を舞台に本格ミステリの体裁で描かれた『薔薇の名前』を読んだのはたしか大学生の頃だったと思うのですが、彼の作品を読むのはそれ以来のことになります。

 

本作の舞台は十字軍の時代の神聖ローマ帝国で、相変わらずのエーコの博識ぶりが際立つのですが、その背景的知識を煙に巻くようなバウドリーノの「ほら吹き」ぶりによって、読者は幻惑されてしまうことになります。長い物語の途中で、いくぶん中だるみさせられてしまいながらも、時折ハッとさせられる描写もありました。

 

【満足度】★★★☆☆