文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

乗代雄介『十七八より』

乗代雄介

『十七八より』 講談社

 

乗代雄介の『十七八より』を読了しました。第58回群像新人文学賞受賞作で、著者のデビュー作品です。主人公である女子高生の日常が、著者の読書量に裏打ちされたペダンチックな筆致で描かれています。主人公の言動の裏側に見え隠れするのは、どこか謎めいたメンターとしての役割を担う叔母の存在で、その叔母とも距離感の中で、主人公がいかに現実と折り合いを付けていくかという方法が測られているような気がします。

 

「中身のない小説」という解説委員の言葉は、場合によってはそのまま読者の感想としてスライドしてくるものかもしれませんが、私自身はここで著者が試みたことに共感を覚えて、本作も『本物の読書家』と同様に、大変面白く読むことができました。

 

【満足度】★★★★☆