文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

アリス・マンロー『善き女の愛』

アリス・マンロー 小竹由美子訳

『善き女の愛』 新潮社

 

アリス・マンロー(1931-)の『善き女の愛』を読了しました。“The Love of a Good Woman”が原題で1998年に出版された短編集です。本書には8編の短編が収録されていますが、いずれも一筋縄ではいかないずっしりと腹に残る読み心地の作品です。マンローの作品は、のめり込んで読むことができたときは本当に面白いのですが、うまくはまらなかったときは(短編といいつつも比較的長い作品が多いので)冗長に感じてしまうときもあります。本書の読書体験はありがたいことに前者でした。

 

表題作「善き女の愛」はマンローらしい重厚な短編で、スティーヴン・キングの“The Body”さながらに、死体を発見することになる少年たちが瑞々しく描かれたかと思うと、物語の場面は一転して、今度は終末期看護の現場における心理がスリリングに描かれます。大変読みごたえのある作品で、発表当初から傑作という評価で「O・ヘンリー賞」を受賞したというのも納得です。そのほかには、物語が迷い込む「異界」のグロテクスさを感じさせられる「セイヴ・ザ・リーパー」も印象に残りました。

 

【満足度】★★★★☆