文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

納富信留『プラトンとの哲学 対話篇を読む』

納富信留

プラトンとの哲学 対話篇を読む』 岩波新書

 

納富信留の『プラトンとの哲学 対話篇を読む』を読了しました。著者自身が「あとがき」において触れているように、既に岩波新書にはプラトンを主題とした作品が2つもラインナップされています。そのうちの一冊は藤沢令夫氏の『プラトンの哲学』で、誰が見ても明らかな名著なわけですが、そのような中で新たに本書を世に出した著者の気概にはやはり驚かされます。

 

そしてその本書の内容はといえば、プラトンの著作が持つ「対話篇」という特質を十二分に引き受けて展開したもので、プラトン哲学が有する哲学の実践としてのスリリングな部分を素晴らしいかたちで哲学的な解説へと落とし込んだものになっています。『ゴルギアス』をテーマにソクラテスよりも論敵であるカリクレスへの共感を語る姿勢など、ハッとさせられる場面がいくつもあり、感動させられました。

 

【満足度】★★★★☆