文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

ウラジーミル・ソローキン『氷』

ウラジーミル・ソローキン 松下隆志訳

『氷』 河出書房新社

 

ウラジーミル・ソローキン(1955-)の『氷』を読了しました。本書は現代ロシア作家のソローキンが2002年に刊行した作品で、続いて発表されることになる『ブロの道』、そして『23000』とともに三部作を成す作品です。どうやら、物語の時系列的には本書は三部作の中では二番目に当たるようですが、まずは刊行順に本書『氷』を読み進めることにしました。

 

氷のハンマーを胸に振り下ろして「真の名」を聞き取るという、奇妙なカルト集団の姿を描いた本作ですが、正直なところ、その設定の奇抜さ以上の見るべきものを、私は本書の中に見て取ることができなかったというのが正直な感想です。とはいえ、訳者によるあとがきでモニターによる感想文に例えられた第三部など、なかなか読ませるテクニックを持つ作家だということも同時に感じさせられました。どうしても細部の面白さしか評価できない点は、以前に『青い脂』を読んだときの感想と同じなのですが。

 

どうせなら三部作はすべて読み切りたいとは思うのですが、そこまで手が伸びるかどうか…

 

【満足度】★★★☆☆