『侍女の物語』 ハヤカワ文庫
マーガレット・アトウッド(1939-)の『侍女の物語』を読了しました。カナダの作家アトウッドは近年(たいていは前評判どおりにはいかな)ノーベル文学賞候補者として名前の挙げられる一人ですが、そんな彼女が1985年に発表してSF界隈をはじめとして話題を呼んだ作品が本書です。原題は“The Handmaid's Tale”で、2019年には続編である“The Testament”が刊行されています。いわゆるディストピア小説なのですが、私が読んだ本書の文庫版の帯には「トランプ政権の未来がここにある」と記されています。
アメリカ東海岸を中心とした国家「ギレアデ」では、ある日を境にして一切の女性の権利が剥奪され、子どもを産むことのできる「機能」を持った女性は、ただ子どもを産むための道具として監理されることになります。「侍女」として生活する主人公の日常は静かな筆致で語られながらも絶妙にグロテスクで、描かれる世界の奇怪さがよく現れています。
【満足度】★★★★☆