文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

ヒューム『自然宗教をめぐる対話』

ヒューム 犬塚元訳

自然宗教をめぐる対話』 岩波文庫

 

ヒューム(1711-1776)の『自然宗教をめぐる対話』を読了しました。ヒュームにしては珍しく対話篇の形式によって書かれた著作で、そのテーマの繊細さゆえにヒュームの死後になってから出版された作品です。「自然宗教」とは「啓示宗教」と対を成す概念で、啓示によらずに神の存在と本性を示そうとする立場で宗教を捉えようとするもの。また本書の解説によればヒュームの自然宗教の立場は「理神論」とも区別されるものであり、理神論が啓示宗教を否定して自然宗教しか認めないのに対して、ヒュームの自然宗教の立場は啓示宗教と両立可能であるとされます。

 

デメア(アプリオリな論証により神を示す)、クレアンテス(アプリオリな論証により神を示す)、そしてフィロ(穏健な懐疑主義者)という三者を登場人物とする対話篇は、神というテーマを扱うには「直接的で簡潔な叙述方法より、はるかに好ましい」ものであるという主張には共感させられる部分があるのでした。面白く読むことができました。

 

【満足度】★★★☆☆