文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

マルティン・ヴァルザー『逃亡する馬』

マルティン・ヴァルザー 内藤道雄訳

『逃亡する馬』 同学社

 

マルティン・ヴァルザー(1927-)の『逃亡する馬』を読了しました。「新しいドイツの文学」シリーズと銘打たれた叢書の一冊ですが、1988年の初版発行ということで、21世紀を迎えた現在の地点から見ると、20世紀後半のドイツ文学という位置づけの作品になるでしょうか。ドイツ、オーストリア、スイスの国境に位置するボーデン湖畔で休暇を過ごす2組の夫婦を中心に描く中編というべき長さの小説です。

 

一昔前のトレンディドラマというと少し印象が違うのかもしれませんが、個々人の職業生活、社会生活、同級生間または夫婦間の対称性、その間でなされる対話、それらの一つひとつから社会(更にいえば歴史)を生きる現実存在の有様が滲み出てきます。

 

【満足度】★★★☆☆