文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

ヴァージニア・ウルフ『三ギニー』

ヴァージニア・ウルフ 出淵敬子訳

『三ギニー』 みすず書房

 

ヴァージニア・ウルフ(1882-1941)の『三ギニー』を読了しました。みすず書房から刊行されている「ヴァージニア・ウルフ コレクション」の最後の一冊です。『自分だけの部屋』と同じく「女性」であることについてのウルフの思想が十分に展開された作品なのですが、本書は「どうしたら戦争を防ぐことができるか」という問いへの回答として書かれた手紙から構成されています。この問いが「誰からの問いなのか」というところから始めて論を進めるウルフの知性が際立っています。

 

タイトルにある「三ギニー」は、それぞれとある団体への寄付金として一ギニーずつ送られることになるのですが、最後の一ギニーを送る際のウルフの筆致は次のとおり。

 

ですからイギリス史の中でいまや初めて、教育ある男性の娘が右に述べたような目的のため、彼の要求に応じて自分で稼いだ一ギニーを見返りとして何かを求めることもせず、兄弟に与えることができるのです。それは怖れも、お世辞も、条件もなく与えられる自由な贈り物なのです。サー、それは文明の歴史上きわめて重要なできごとでしたので、何か祝典が必要であるように思われます。

 

鍛えられた思考のみが表現できる力強い言葉だと思います。

 

【満足度】★★★★☆