文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

ナサニエル・ウエスト『いなごの日/クール・ミリオン』

ナサニエル・ウエスト 柴田元幸

『いなごの日/クール・ミリオン』 新潮文庫

 

ナサニエル・ウエスト(1903-1940)の『いなごの日/クール・ミリオン』を読了しました。新潮文庫から合計で10冊が刊行されている村上柴田翻訳堂の最後の一冊です。フィッツジェラルドとほぼ同年代(7歳ほど年下)の作家であるナサニエル・ウエストの長編2作品と短編2作品が収録された、ある意味では欲張りな編集になっているのですが、こうして「抱き合わせ」しないといけない事情もあるのかもしれません。

ハリウッドを舞台に描かれた「いなごの日」も面白く読むことができましたが、「クール・ミリオン」が放つ異様さは昔の劇画漫画を読むようで、良い意味でも悪い意味でも引きつけられるものがありました。巻末の柴田氏と村上氏の対談(解説セッション)で、村上氏がヘミングウェイと対照させながら時代を象徴する作家たるには至らなかったウエストを評して「居場所がない」と喝破していますが、たしかにそうなのかもしれません。

 

【満足度】★★★☆☆