『ダブリナーズ』 新潮文庫
ジェイムズ・ジョイス(1882-1941)の『ダブリナーズ』を読了しました。同じく新潮文庫に収められている『ダブリン市民』を読んだのは、たしか大学生の頃だったと思うのですが、今回はジョイス研究者としても名高い柳瀬氏による『ダブリナーズ』として再読することになりました。訳者逝去のため、『ユリシーズ』の翻訳が完結しなかったことはとても残念なのですが。
邦題にも顕れているとおり、響きにこだわる訳者ならではの「声」が印象に残ります。
――わ、コンロイさん、と、リリーがゲイブリエルに言い、ドアを開いて招き入れた。お見えれないんじゃないかって、ケイトさんもジューリアさんも言ってました。おじゃましてください、奥さん。(死者たち)
ダブリナーズたちの市井の声を掬い上げる著者と訳者の丹念な仕事ぶりを味わうことができました。
【満足度】★★★☆☆