文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

J・L・ボルヘス『創造者』

J・L・ボルヘス 鼓直

『創造者』 岩波文庫

 

J・L・ボルヘス(1899-1986)の『創造者』を読了しました。小説や評論の分野で多大な影響力を残したボルヘスですが、その詩作の分野で代表的な作品のひとつが1960年に発表された本書であるとのこと。詩集というよりは、評論を含めた雑文もいっしょくたに編集された詩文集と呼ばれるべきものになっています。

 

作者であるボルヘス自身がエピローグにおいて語るように、「これまで公刊したすべての書物のなかでも、とりとめない寄せ集めと見えるこの雑簒ほど個性的なものは他にないと思う」とされる本書ですが、チェスをモチーフにして臆面もなく無邪気にイメージの翼を広げる「象棋」などを読むにつけ、ボルヘスの魅力はその率直さにあるのではないかという気がしてくるのでした。

 

【満足度】★★★☆☆