文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

2018-01-01から1年間の記事一覧

カズオ・イシグロ『わたしたちが孤児だったころ』

カズオ・イシグロ 入江真佐子訳 『わたしたちが孤児だったころ』 ハヤカワ文庫 カズオ・イシグロ(1954-)の『わたしたちが孤児だったころ』を読了しました。本作は2000年に発表されたカズオ・イシグロの長編第五作目です。作品の外形的な特徴が毎作変化する…

ヘンリー・ジェイムズ『ねじの回転』

ヘンリー・ジェイムズ 小川高義訳 『ねじの回転』 新潮文庫 ヘンリー・ジェイムズ(1843-1916)の『ねじの回転』を読了しました。神秘主義思想家スウェーデンボルグを信奉する父のもと裕福な家庭で育ったヘンリー・ジェイムズは、子どもの頃から生誕地である…

スタインベック『怒りの葡萄』

スタインベック 伏見威蕃訳 『怒りの葡萄』 新潮文庫 スタインベック(1902-1968)の『怒りの葡萄』を読了しました。ドイツ系移民の祖父を持つスタインベック(ドイツ語読みをすれば「シュタインベック」でしょうか)は、カリフォルニア州サリナスに生まれ、…

クヌート・ハムスン『ヴィクトリア』

クヌート・ハムスン 冨原眞弓訳 『ヴィクトリア』 岩波文庫 クヌート・ハムスン(1859-1952)の『ヴィクトリア』を読了しました。クヌート・ハムスンはノルウェーの小説家で、本書のカバーに記された短い紹介文では「モダニズム文学の先駆者」であるとされて…

フリードリヒ・W・ニーチェ『ツァラトゥストラかく語りき』

フリードリヒ・W・ニーチェ 佐々木中訳 『ツァラトゥストラかく語りき』 河出文庫 フリードリヒ・W・ニーチェ(1844-1900)の『ツァラトゥストラかく語りき』を読了しました。本書は海外文学というよりは哲学書の範疇に入れるべき書物。19世紀末に活躍し、20…

チャールズ・ブコウスキー『町でいちばんの美女』

チャールズ・ブコウスキー 青野聰訳 『町でいちばんの美女』 新潮文庫 チャールズ・ブコウスキー(1920-1994)の『町でいちばんの美女』を読了しました。ブコウスキーの本を読むのは『パルプ』に続いて二冊目です。ブコウスキーはアメリカ人兵士である父とド…

『ベストストーリーズⅡ 蛇の靴』

若島正編 『ベストストーリーズⅡ 蛇の靴』 早川書房 雑誌『ニューヨーカー』に掲載された短編小説をはじめとする作品について未訳のものを中心にアンソロジーとしてまとめた『ベストストーリーズ』。1960年代から1980年代までの作品が収録された第二巻を読了…

ジュノ・ディアス『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』

ジュノ・ディアス 都甲幸治・久保尚美訳 『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』 新潮社 ジュノ・ディアス(1968-)の『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』を読了しました。作者のジュノ・ディアスはドミニカ共和国に生まれ、6歳のときに家族でアメリカに渡…

ドン・デリーロ『コズモポリス』

ドン・デリーロ 上岡伸雄訳 『コズモポリス』 新潮文庫 ドン・デリーロ(1936-)の『コズモポリス』を読了しました。ドン・デリーロは現代アメリカを代表する作家のひとりで、ノーベル文学賞候補とも目されています。本書は2003年に発表された作品で、文学界…

フランソワーズ・サガン『悲しみよ こんにちは』

フランソワーズ・サガン 河野万里子訳 『悲しみよ こんにちは』 新潮文庫 フランソワーズ・サガン(1935-2004)の『悲しみよ こんにちは』を読了しました。高校時代に読んだ記憶があるのですが、今回は新訳での読み直し。多くの人に影響を与えた作品だと思い…

T・S・エリオット『荒地』

T・S・エリオット 岩崎宗治訳 『荒地』 岩波文庫 T・S・エリオット(1888-1965)の『荒地』を読了しました。しかし、これを読了といってもよいのかどうか、いささか疑問が残る状況ではあります。正直なところ、一度読んだだけでは、まるで何が書いてあるのか…

チョーサー『完訳 カンタベリー物語』

チョーサー 桝井迪夫訳 『完訳 カンタベリー物語』 岩波文庫 チョーサー(1343頃-1400)の『カンタベリー物語』を読了しました。イギリスの詩人ジェフリー・チョーサーにより書かれた物語集で、歴史の授業にも登場しますね。言い換えると歴史の授業以外では…

マーク・トウェイン『マーク・トウェイン短編集』

マーク・トウェイン 古沢安二郎訳 『マーク・トウェイン短編集』 新潮文庫 マーク・トウェイン(1835-1910)の『マーク・トウェイン短編集』を読了しました。本書は1961年に新潮文庫で出版されたものですが、新訳で読んだ『ジム・スマイリーの跳び蛙』といく…

ル・クレジオ『心は燃える』

ル・クレジオ 中地義和・鈴木雅生訳 『心は燃える』 作品社 ル・クレジオ(1940-)の『心は燃える』を読了しました。本書はフランスのノーベル賞作家であるル・クレジオの中短編集で、2000年にフランスで刊行され、2017年に日本語で全訳が出版されています。…

レイ・ブラッドベリ『華氏451度』

レイ・ブラッドベリ 伊藤典夫訳 『華氏451度』 ハヤカワ文庫 レイ・ブラッドベリ(1920-2012)の『華氏451度』を読了しました。新訳として2014年に出版された版です。最近はフィリップ・K・ディックの翻訳も多く本屋で見かけますし、SFの復刊が進んでいるの…

ナボコフ『カメラ・オブスクーラ』

ナボコフ 貝澤哉訳 『カメラ・オブスクーラ』 光文社古典新訳文庫 ナボコフ(1899-1977)の『カメラ・オブスクーラ』を読了しました。本書はナボコフがロシア語で執筆した長編小説のロシア語原点からの翻訳です。これまでにも英語で執筆されたナボコフの作品…

テジュ・コール『オープン・シティ』

テジュ・コール 小磯洋光訳 『オープン・シティ』 新潮社 テジュ・コール(1975-)の『オープン・シティ』を読了しました。著者はアメリカ・ミシガン州生まれ。両親の母国であるナイジェリアで幼少期を過ごし、高校卒業後にアメリカに戻ったとのこと。写真家…

フアン・ルルフォ『燃える平原』

フアン・ルルフォ 杉山晃訳 『燃える平原』 岩波文庫 フアン・ルルフォ(1917-1986)の『燃える平原』を読了しました。フアン・ルルフォはメキシコの作家で、後年は写真家としても活躍したようです。短編集である本書と長編『ペドロ・パラモ』が代表作で、ガ…

ジュール・ルナール『にんじん』

ジュール・ルナール 高野優訳 『にんじん』 新潮文庫 ジュール・ルナール(1864-1910)の『にんじん』を読了しました。ジュール・ルナールの作品を読むのは初めてのことで、本書についても以前からタイトルは知っていたものの、手に取ることはありませんでし…

『ベスト・ストーリーズⅠ ぴょんぴょんウサギ玉』

若島正編 『ベスト・ストーリーズⅠ ぴょんぴょんウサギ玉』 早川書房 若島正編『ベスト・ストーリーズⅠ ぴょんぴょんウサギ玉』を読了しました。アメリカの雑誌『ニューヨーカー』に掲載された小説や記事を未訳の作品を中心にまとめたという『ベスト・ストー…

デュマ・フィス『椿姫』

デュマ・フィス 西永良成訳 『椿姫』 角川文庫 アレクサンドル・デュマ・フィス(1824-1895)の『椿姫』を読了しました。『モンテ・クリスト伯』や『三銃士』の著者として知られるアレクサンドル・デュマの息子だから「デュマ・フィス」。お父さんの方は「デ…

J・M・クッツェー『ダスクランズ』

J・M・クッツェー くぼたのぞみ訳 『ダスクランズ』 人文書院 J・M・クッツェー(1940-)の『ダスクランズ』を読了しました。本作はクッツェーのデビュー作で、1974年に南アフリカのヨハネスブルクにある出版社から世に出ました。日本では1994年にスリーエー…

ヴァージニア・ウルフ『自分だけの部屋』

ヴァージニア・ウルフ 川本静子訳 『自分だけの部屋』 みすず書房 ヴァージニア・ウルフ(1882-1941)の『自分だけの部屋』を読了しました。古本市で購入したヴァージニア・ウルフコレクションの中の一冊で、このような出会いがなければ手に取ることがなかっ…

ボリス・ヴィアン『お前らの墓につばを吐いてやる』

ボリス・ヴィアン 鈴木創士訳 『お前らの墓につばを吐いてやる』 河出文庫 ボリス・ヴィアン(1920-1959)の『お前らの墓につばを吐いてやる』を読了しました。『日々の泡』を読んだのは、高校時代だったかあるいは大学時代だったのかはっきりとは覚えていな…

アンソニー・ドーア『メモリー・ウォール』

アンソニー・ドーア 岩本正恵訳 『メモリー・ウォール』 新潮社 アンソニー・ドーア(1973-)の『メモリー・ウォール』を読了しました。アンソニー・ドーアの作品を読むのは『シェル・コレクター』に次いで二冊目のこと。現代アメリカの若手(?)注目作家の…

イアン・マキューアン『贖罪』

イアン・マキューアン 小山太一訳 『贖罪』 新潮文庫 イアン・マキューアン(1948-)の『贖罪』を読了しました。たしか大学時代だったと思うのですが、ブッカー賞を受賞した『アムステルダム』を読んで、何年か前に各種書評等でも話題になった『未成年』を読…

グレアム・スウィフト『マザリング・サンデー』

グレアム・スウィフト 真野泰訳 『マザリング・サンデー』 新潮社 グレアム・スウィフト(1949-)の『マザリング・サンデー』を読了しました。新潮クレストブックスで本編が162ページ、中編小説というべき長さの作品です。各所でわりと話題になっている本で…

サマセット・モーム『英国諜報員アシェンデン』

サマセット・モーム 金原端人訳 『英国諜報員アシェンデン』 新潮文庫 サマセット・モーム(1874-1965)の『英国諜報員アシェンデン』を読了しました。モームは短編のいくつかと『月と六ペンス』を読んで、そのうまさに感心した(決して感動ではなかったので…

カルミネ・アバーテ『風の丘』

カルミネ・アバーテ 関口英子訳 『風の丘』 新潮社 カルミネ・アバーテ(1954-)の『風の丘」を読了しました。イタリア南部生まれで少数言語アルバレシュ語が話される環境で育ち、かつてはドイツ語で小説を発表したこともあるというカルミネ・アバーテ。同じ…

レイモンド・カーヴァー『ファイアズ(炎)』

レイモンド・カーヴァー 村上春樹訳 『ファイアズ(炎)』 中央公論新社 レイモンド・カーヴァー(1938-1988)の『ファイアズ(炎)』を読了。全集の第4巻にあたる作品で、エッセイ、詩、短編小説のそれぞれが収められたカーヴァー自身が選んで出版された作…