文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

2019-03-01から1ヶ月間の記事一覧

ディミトリ・フェルフルスト『残念な日々』

ディミトリ・フェルフルスト 長山さき訳 『残念な日々』 新潮社 ディミトリ・フェルフルスト(1972-)の『残念な日々』を読了しました。プロフィールによると、著者のフェルフルストは、ベルギーのオランダ語圏であるフランダース生まれ。自身の子ども時代を…

一ノ瀬正樹『確率と曖昧性の哲学』

一ノ瀬正樹 『確率と曖昧性の哲学』 岩波書店 一ノ瀬正樹の『確率と曖昧性の哲学』を読了しました。ロックやヒュームなどのイギリス経験論の研究から、実践的な哲学論考に至るまで幅広く活躍している著者ですが、本書は「自然化された認識論」、「因果性」、…

イアン・マキューアン『土曜日』

イアン・マキューアン 小山太一訳 『土曜日』 新潮社 イアン・マキューアン(1948-)の『土曜日』を読了しました。ロンドンに住む脳神経外科医ヘンリー・ペロウンの目覚めから眠りに至るまでの一日、その土曜日を描いた作品です。 奇妙な多幸感に満たされて…

チェーホフ『六号病棟・退屈な話 他五篇』

チェーホフ 松下裕訳 『六号病棟・退屈な話 他五篇』 岩波文庫 チェーホフ(1860-1904)の『六号病棟・退屈な話 他五篇』を読了しました。「桜の園」などの戯曲で有名なチェーホフですが、短編作家としても世界中にファンのいる作家で、私もかつていくつかの…

冨田恭彦『カント批判―『純粋理性批判』の論理を問う』

冨田恭彦 『カント批判―『純粋理性批判』の論理を問う』 勁草書房 冨田恭彦の『カント批判―『純粋理性批判』の論理を問う』を読了しました。『カント入門講義』や『カント哲学の奇妙な歪み』など、立て続けにカントを批判的に読解する著作を上梓している冨田…

ウィリアム・シェイクスピア『マクベス』

ウィリアム・シェイクスピア 小田島雄志訳 『マクベス』 白水Uブックス ウィリアム・シェイクスピア(1564-1616)の『マクベス』を読了しました。以前に読んだのは岩波文庫の翻訳だったような気がしますが、『リア王』や『オセロ』、あるいは『ハムレット』…

一松信『暗号の数理 改訂新版 作り方と解読の原理』

一松信 『暗号の数理 改訂新版 作り方と解読の原理』 講談社 一松信の『暗号の数理 改訂新版 作り方と解読の原理』を読了しました。講談社のブルーバックスから出た新書で、本書は2005年に改訂された新版になります。おそらく購入したのはその頃だったのだと…

コレット『青い麦』

コレット 河野万里子訳 『青い麦』 光文社古典新訳文庫 コレット(1873-1954)の『青い麦』を読了しました。性の解放を謳って、その作品のみならず、私生活においてもそのテーゼを体現したかのようなシドニー=ガブリエル・コレットですが、その代表作のひと…

アゴタ・クリストフ『第三の嘘』

アゴタ・クリストフ 堀茂樹訳 『第三の嘘』 ハヤカワ文庫 アゴタ・クリストフ(1935-2011)の『第三の嘘』を読了しました。『悪童日記』と『ふたりの証拠』とあわせて三部作を成している作品です。本書の原題は“Le Troisième Mensonge”で『第三の嘘』という…

E・ギルバート『巡礼者たち』

E・ギルバート 岩本正恵訳 『巡礼者たち』 新潮文庫 E・ギルバートの『巡礼者たち』を読了しました。作者のギルバートは小説をはじめとして、ノンフィクションの分野でも活躍している作家です。本書『巡礼者たち』は彼女の処女短編集とのことです。 本書の冒…

コーマック・マッカーシー『越境』

コーマック・マッカーシー 黒原敏行訳 『越境』 ハヤカワ文庫 コーマック・マッカーシー(1933-)の『越境』を読了しました。『すべての美しい馬』に続く「国境三部作」の二作目です。文庫本にして650ページを超える大部の小説ですが、ゆっくりと読み進めて…

フィリップ・ロス『ダイング・アニマル』

フィリップ・ロス 上岡伸雄訳 『ダイング・アニマル』 集英社 フィリップ・ロス(1933-2018)の『ダイング・アニマル』を読了しました。本書の主人公はデイヴィッド・ケペシュという文化批評家で、未読ですがロスの他の作品『乳房になった男』や『欲望学教授…

カント『プロレゴメナ』

カント 篠田英雄訳 『プロレゴメナ』 岩波文庫 カント(1724-1804)の『プロレゴメナ』を読了しました。本書のタイトルを正確に表すと『学として登場しうる将来の形而上学のためのプロレゴメナ(序論)』となります。カントのいう「形而上学」は、純粋数学や…

スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ『戦争は女の顔をしていない』

スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ 三浦みどり訳 『戦争は女の顔をしていない』 岩波現代文庫 スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ(1948-)の『戦争は女の顔をしていない』を読了しました。スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチはベラルーシのジャーナリス…

沼田真佑『影裏』

沼田真佑 『影裏』 文藝春秋 沼田真佑の『影裏』を読了しました。第157回の芥川賞受賞作で、多面的な読みを許容する小説です。釣りの描写の瑞々しさも心地よいですし、性的なマイノリティーの抱える葛藤が描かれていると受け取ることもできるのでしょう。不…

冨田恭彦『カント入門講義』

冨田恭彦 『カント入門講義』 ちくま学芸文庫 冨田恭彦の『カント入門講義』を読了しました。本書は『カント哲学の奇妙な歪み』と同様に、カントを「歴史」の中に位置づけながら批判的に読解するものでありますが、同時にカント哲学の解説も意図されているよ…

冨田恭彦『カント哲学の奇妙な歪み』

冨田恭彦 『カント哲学の奇妙な歪み』 岩波現代全書 冨田恭彦の『カント哲学の奇妙な歪み』を読了しました。積み残していた『純粋理性批判』の再読に向けて、カント哲学の復習をしておこうと思って手に取ったのが本書です。ロック研究者として知られる冨田氏…

ヒューム『人間知性研究』

ヒューム 神野慧一郎・中才敏郎訳 『人間知性研究』 京都大学学術出版会 ヒューム(1711-1776)の『人間知性研究』を読了しました。経験主義の系譜に連なるイギリスの哲学者であるデイヴィッド・ヒュームは1759年に本書を発表しましたが、これは彼が20代のと…