文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

2019-04-01から1ヶ月間の記事一覧

スティーヴン・ミルハウザー『魔法の夜』

スティーヴン・ミルハウザー 柴田元幸訳 『魔法の夜』 白水社 スティーヴン・ミルハウザー(1943-)の『魔法の夜』を読了しました。アメリカ東海岸のコネチカット州南部にある海辺の町、夏の夜を舞台に展開される群像劇が不思議な筆致で描かれているのが本書…

崔実『ジニのパズル』

崔実 『ジニのパズル』 講談社 崔実の『ジニのパズル』を読了しました。本書は群像新人文学賞、芸術選奨新人賞、織田作之助賞を受賞した話題の作品です。最近になって文庫化されたようですが、以前に購入して読めないままになっていた本書を最近になってよう…

飯田隆『言語哲学大全Ⅱ 意味と様相(上)』

飯田隆 『言語哲学大全Ⅱ 意味と様相(上)』 勁草書房 飯田隆の『言語哲学大全Ⅱ 意味と様相(上)』を読了しました。第一巻の主役はフレーゲとラッセルでしたが、本書の主要な登場人物は論理実証主義者たち、ウィトゲンシュタイン、そしてクワインです。ウィ…

ヴィーコ『学問の方法』

ヴィーコ 上村忠男・佐々木力訳 『学問の方法』 岩波文庫 ヴィーコ(1668-1744)の『学問の方法』を読了しました。ジャンバッティスタ・ヴィーコはイタリアの思想家で、ナポリの小さな本屋の息子として生まれたそうです。やがてナポリ大学の教授に就任したヴ…

ジョン・ロック『知性の正しい導き方』

ジョン・ロック 下川潔訳 『知性の正しい導き方』 ちくま学芸文庫 ジョン・ロック(1632-1704)の『知性の正しい導き方』を読了しました。イギリスの偉大な哲学者ロックの遺稿をもとに彼の死後に出版されたのが本書で、その原題は“Of the Conduct of the Und…

ヘミングウェイ『われらの時代・男だけの世界 ―ヘミングウェイ全短編1―』

ヘミングウェイ 高見浩訳 『われらの時代・男だけの世界 ―ヘミングウェイ全短編1―』 新潮文庫 ヘミングウェイ(1899-1961)の『われらの時代・男だけの世界 ―ヘミングウェイ全短編1―』を読了しました。ヨーロッパでの戦争体験を経て、一度アメリカに帰国した…

サミール・オカーシャ『1冊でわかる 科学哲学』

サミール・オカーシャ 廣瀬覚訳 『1冊でわかる 科学哲学』 岩波書店 サミール・オカーシャの『1冊でわかる 科学哲学』を読了しました。そのタイトルの通り、コンパクトにまとめられた科学哲学の教科書で、推論、説明、実在論・反実在論、パラダイム論、個別…

飯田隆『言語哲学大全Ⅰ 論理と言語』

飯田隆 『言語哲学大全Ⅰ 論理と言語』 勁草書房 飯田隆の『言語哲学大全Ⅰ 論理と言語』を読了しました。学生時代に読んで以来、そのままになっていたのですが、最近の哲学の学び直しを機に、全四巻を読了したいと考えています。まずはフレーゲとラッセルの言…

伊勢田哲治『認識論を社会化する』

伊勢田哲治 『認識論を社会化する』 名古屋大学出版会 伊勢田哲治の『認識論を社会化する』を読了しました。本書の冒頭では「本書の主要なテーマは科学社会学と認識論のよりよい関係の構築のために何をすべきか考えること、とりわけ社会学的な理論や知見を認…

フィリップ・K・ディック『偶然世界』

フィリップ・K・ディック 小尾芙佐 『偶然世界』 ハヤカワ文庫 フィリップ・K・ディック(1928-1982)の『偶然世界』を読了しました。SF作家ディックの第一長編作品です。原題は「Solar Lottery」で、直訳すると「太陽のくじ」といったところでしょうか。か…

須藤靖・伊勢田哲治『科学を語るとはどういうことか 科学者、哲学者にモノ申す』

須藤靖・伊勢田哲治 『科学を語るとはどういうことか 科学者、哲学者にモノ申す』 河出ブックス 須藤靖・伊勢田哲治『科学を語るとはどういうことか 科学者、哲学者にモノ申す』を読了しました。物理学者である須藤氏が持つ「科学哲学」に関する疑問や不信感…

ジョン・アップダイク『結婚しよう』

ジョン・アップダイク 岩元巌訳 『結婚しよう』 新潮文庫 ジョン・アップダイク(1932-2009)の『結婚しよう』を読了しました。アップダイクの作品を読むのは、たしかこれで五作目になるのでしょうか。本書のタイトルは『結婚しよう(原題 Marry Me)』で、…

加藤尚武 責任編集『哲学の歴史 第7巻 理性の劇場【18-19世紀】』

加藤尚武 責任編集 『哲学の歴史 第7巻 理性の劇場【18-19世紀】』 中央公論新社 『哲学の歴史 第7巻 理性の劇場【18-19世紀】』を読了しました。西洋哲学の網羅的な歴史解説書ということで、かなり有用な書籍だと思うのですが、執筆者の“カラー”もまちまち…

シャロン・バーチュ・マグレイン『異端の統計学 ベイズ』

シャロン・バーチュ・マグレイン 冨永星訳 『異端の統計学 ベイズ』 草思社文庫 シャロン・バーチュ・マグレインの『異端の統計学 ベイズ』を読了しました。アメリカのサイエンスライターの著したベイズ統計学の歴史を巡るノンフィクションです。数式はほと…

戸田山和久『科学的実在論を擁護する』

戸田山和久 『科学的実在論を擁護する』 名古屋大学出版会 戸田山和久の『科学的実在論を擁護する』を読了しました。電子やクォークのような、実際に目で見たり手で触ったりして確かめることができないような科学的理論(の対象)が、本当にこの世界において…

柳瀬尚紀『ジェイムズ・ジョイスの謎を解く』

柳瀬尚紀 『ジェイムズ・ジョイスの謎を解く』 岩波新書 柳瀬尚紀(1943-2016)の『ジェイムズ・ジョイスの謎を解く』を読了しました。並行してジョイスの『ユリシーズ』を読んでいるのですが、そちらの読書の方はゆっくりとした進み行きでなかなか終わりが…

諏訪哲史『アサッテの人』

諏訪哲史 『アサッテの人』 講談社文庫 諏訪哲史の『アサッテの人』を読了しました。群像新人文学賞と芥川賞をダブル受賞した作品です。カバーにある粗筋をそのまま引用すると「吃音による疎外感から凡庸な言葉への嫌悪をつのらせ、孤独な風狂の末に行方をく…