文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

2019-05-01から1ヶ月間の記事一覧

ダニエル・アラルコン『ロスト・シティ・レディオ』

ダニエル・アラルコン 藤井光訳 『ロスト・シティ・レディオ』 新潮社 ダニエル・アラルコンの『ロスト・シティ・レディオ』を読了しました。彼の作品を読むのは『夜、僕らは輪になって歩く』に続いて二冊目です。出版されたのは本書の方が早く、本書はアラ…

ナディン・ゴーディマ『バーガーの娘』

ナディン・ゴーディマ 福島富士男訳 『バーガーの娘』 みすず書房 ナディン・ゴーディマの『バーガーの娘』を読了しました。彼女の短編作品には何度も感動させられたのですが、長編作品を読むのは初めてのことです。二巻に分冊されたハードカバーの本を持ち…

莫言『赤い高粱』

莫言 井口晃訳 『赤い高粱』 岩波現代文庫 莫言の『赤い高粱』を読了しました。中国のノーベル賞作家である莫言は筆名で「言う莫(なか)れ」を意味するそうです。現代中国の作家の作品を読むのは、たぶんこれが初めてのことだと思います。 解説によれば、本…

ギュスターヴ・フローベール『ボヴァリー夫人』

ギュスターヴ・フローベール 芳川泰久訳 『ボヴァリー夫人』 新潮文庫 ギュスターヴ・フローベール(1821-1880)の『ボヴァリー夫人』を読了しました。大学時代に読んだのは、たしか岩波文庫の翻訳だったと思うのですが、今回は新潮文庫スタークラシックスの…

ソログープ『かくれんぼ・毒の園 他五篇』

ソログープ 中山省三郎・昇曙夢訳 『かくれんぼ・毒の園 他五篇』 岩波文庫 ソログープ(1863-1927)の『かくれんぼ・毒の園 他五篇』を読了しました。ソログープはロシア前期象徴主義を代表する詩人・作家とのことで、作品を読むのは初めてのことでした。「…

中村健之介『ドストエフスキー人物事典』

中村健之介 『ドストエフスキー人物事典』 講談社学術文庫 中村健之介の『ドストエフスキー人物事典』を読了しました。書店の店頭で見かけて何の気なしに購入したのですが、控えめにいって「当たり」というか、本書を一度読み始めてからは、寝食を忘れて夢中…

多和田葉子『尼僧とキューピッドの弓』

多和田葉子 『尼僧とキューピッドの弓』 講談社文庫 多和田葉子の『尼僧とキューピッドの弓』を読了しました。日本語とドイツ語の両方で作品を発表している多和田さんの作品を読むのは今回が初めてのことになります。作品の舞台はドイツの田舎町にある尼僧修…

島田荘司『嘘でもいいから誘拐事件』

島田荘司 『嘘でもいいから誘拐事件』 集英社文庫 島田荘司の『嘘でもいいから誘拐事件』を読了しました。有名な御手洗潔シリーズや吉敷竹史シリーズではないのですが、これも島田氏のシリーズもののひとつです。とはいえシリーズものとはいっても、私の知る…

イアン・マキューアン『ソーラー』

イアン・マキューアン 村松潔訳 『ソーラー』 新潮社 イアン・マキューアン(1948-)の『ソーラー』を読了しました。マキューアンの作品はそのどれもが面白くはあるのですが、深く心を動かされることはない、という私にとっては鬼門(?)のような作家になっ…

伊坂幸太郎『ホワイトラビット』

伊坂幸太郎 『ホワイトラビット』 新潮社 伊坂幸太郎の『ホワイトラビット』を読了しました。エンタメ系の小説を読むのは随分と久しぶりのような気がします。本書には『ラッシュライフ』など伊坂さんの他の小説でもおなじみの人気キャラクター・黒澤(泥棒)…

ジェイムズ・ジョイス『ユリシーズ』

ジェイムズ・ジョイス 丸谷才一・永川玲二・高松雄一訳 『ユリシーズ』 集英社文庫 ジェイムズ・ジョイス(1882-1941)の『ユリシーズ』を読了しました。ようやくのことで読み切ることができました。年末頃から読み始めていたのですが、分冊の三巻あたり(第…

ティム・オブライエン『ニュークリア・エイジ』

ティム・オブライエン 村上春樹訳 『ニュークリア・エイジ』 文春文庫 ティム・オブライエン(1946-)の『ニュークリア・エイジ』を読了しました。アメリカの「核の時代」を背景にした青春小説と言ってよいのでしょうか。ベトナム戦争をテーマにした作品群で…

坂本百大編『現代哲学基本論文集Ⅰ』

坂本百大編 『現代哲学基本論文集Ⅰ』 勁草書房 坂本百大編『現代哲学基本論文集Ⅰ』を読了しました。最近の言語哲学の学び直しに伴って、本書もあらためて読み直してみました。収録作品は以下の通りです。 ゴットロープ・フレーゲ『意義と意味について』 バー…

金森修『現代思想の冒険者たち 第05巻 バシュラール―科学と詩』

金森修 『現代思想の冒険者たち 第05巻 バシュラール―科学と詩』 講談社 金森修の『現代思想の冒険者たち 第05巻 バシュラール―科学と詩』を読了しました。この「現代思想の冒険者たち」シリーズには思い入れがあって、現在ではどれも重版品切れになってしま…

栃内新・左巻健男『新しい高校生物の教科書』

栃内新・左巻健男 『新しい高校生物の教科書』 講談社 栃内新・左巻健男の『新しい高校生物の教科書』を読了しました。最近どうも海外文学からすっかり遠ざかってしまったような気がするのですが(並行して読んではいるのですが)、昨年からの哲学熱に浮かさ…

ヴィクトール・E・フランクル『夜と霧 新版』

ヴィクトール・E・フランクル 池田香代子訳 『夜と霧』 みすず書房 ヴィクトール・E・フランクル(1905-1997)の『夜と霧』を読了しました。フロイトに師事し、精神医学を学んだ心理学者が、第二次世界大戦時の強制収容所での体験を著した言わずと知れた名著…

バートランド・ラッセル『私の哲学の発展』

バートランド・ラッセル 野田又夫訳 『私の哲学の発展』 みすず書房 バートランド・ラッセル(1872-1970)の『私の哲学の発展』を読了しました。イギリスの哲学者ラッセルが晩年に著した自伝的著作です。ここまで赤裸々に自らの思想遍歴を語られると読んでい…

ナボコフ『絶望』

ナボコフ 貝澤哉訳 『絶望』 光文社古典新訳文庫 ナボコフ(1899-1977)の『絶望』を読了しました。本書はナボコフがロシア語で著して、彼が37歳のときにベルリンで出版された作品のロシア語版の翻訳です。ナボコフ作品のロシア時代の(ロシア語の)作品の邦…

飯田隆『言語哲学大全Ⅲ 意味と様相(下)』

飯田隆 『言語哲学大全Ⅲ 意味と様相(下)』 勁草書房 飯田隆の『言語哲学大全Ⅲ 意味と様相(下)』を読了しました。本書の全編が、可能世界意味論という道具立てをもとにした様相理論の解説にあてられています。可能世界意味論が可能にした様相概念によって…

アントニオ・タブッキ『供述によるとペレイラは……』

アントニオ・タブッキ 須賀敦子訳 『供述によるとペレイラは……』 白水Uブックス アントニオ・タブッキ(1943-2012)の『供述によるとペレイラは……』を読了しました。アントニオ・タブッキはイタリアの作家で、ポルトガルの詩人フェルナンド・ペソアに魅せら…