文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

2020-04-01から1ヶ月間の記事一覧

フランソワ・ラブレー『第四之書 パンタグリュエル物語』

フランソワ・ラブレー 渡辺一夫訳 『第四之書 パンタグリュエル物語』 岩波文庫 フランソワ・ラブレー(1483?-1553)の『第四之書 パンタグリュエル物語』を読了しました。本書ではパニュルジュの結婚に関する神託を求めて航海の旅に出たパンタグリュエル一…

アリス・マンロー『ピアノ・レッスン』

アリス・マンロー 小竹由美子訳 『ピアノ・レッスン』 新潮社 アリス・マンロー(1931-)の『ピアノ・レッスン』を読了しました。本作はマンローのデビュー作で原題は“Dance of the Happy Shades”、15編の短編作品が収録されています。ウルフのいう「自分だ…

フランソワ・ラブレー『第三之書 パンタグリュエル物語』

フランソワ・ラブレー 渡辺一夫訳 『第三之書 パンタグリュエル物語』 岩波文庫 フランソワ・ラブレー(1483?-1553)の『第三之書 パンタグリュエル物語』を読了しました。このルネサンス期文学の古典も本作で三作目となります。第一之書と第二之書(実際の…

マルティン・ハイデッガー『存在と時間』

マルティン・ハイデッガー 細谷貞雄訳 『存在と時間』 ちくま学芸文庫 マルティン・ハイデッガー(1889-1976)の『存在と時間』を読了しました。いわずと知れた20世紀における哲学上の主要著作のひとつですが、21世紀の現在においてはどのような評価になって…

ポール・オースター『サンセット・パーク』

ポール・オースター 柴田元幸訳 『サンセット・パーク』 新潮社 ポール・オースター(1947-)の『サンセット・パーク』を読了しました。原著の出版は2010年のことで、物語の舞台はリーマンショックの起こった2008年とされています。過去の記憶から家族と離れ…

フランソワ・ラブレー『第二之書 パンタグリュエル物語』

フランソワ・ラブレー 渡辺一夫訳 『第二之書 パンタグリュエル物語』 岩波文庫 フランソワ・ラブレー(1483?-1553)の『第二之書 パンタグリュエル物語』を読了しました。実際には『第一之書』に先行して書かれたとされる本書は、第一之書の主人公であるガ…

渡辺公三『現代思想の冒険者たち 第20巻 レヴィ=ストロース―構造』

渡辺公三 『現代思想の冒険者たち 第20巻 レヴィ=ストロース―構造』 講談社 渡辺公三の『現代思想の冒険者たち 第20巻 レヴィ=ストロース―構造』を読了しました。このシリーズは哲学に対する私の興味関心を駆り立ててくれた思い出のある叢書なのですが、本巻…

アラン・ソーカル  ジャン・ブリクモン『「知」の欺瞞 ポストモダン思想における科学の濫用』

アラン・ソーカル ジャン・ブリクモン 田崎晴明・大野克嗣・堀茂樹訳 『「知」の欺瞞 ポストモダン思想における科学の濫用』 岩波現代文庫 アラン・ソーカル とジャン・ブリクモンの『「知」の欺瞞 ポストモダン思想における科学の濫用』を読了しました。著…

『対訳 ホイットマン詩集―アメリカ詩人選(2)』

木島始編 『対訳 ホイットマン詩集―アメリカ詩人選(2)』 岩波文庫 『対訳 ホイットマン詩集―アメリカ詩人選(2)』を読了しました。アメリカ最大の詩人と呼ばれるホイットマンの対訳詩集です。ホイットマンが生涯で書いた詩集はたった一冊『草の葉』のみな…

J・M・クッツェー『続・世界文学論集』

J・M・クッツェー 田尻芳樹訳 『続・世界文学論集』 みすず書房 J・M・クッツェー(1940-)『続・世界文学論集』を読了しました。同じくみすず書房から刊行されている『世界文学論集』の続編ということになるのですが、前作と同様に訳者による選定のもとで、…

トーマス・クーン『コペルニクス革命』

トーマス・クーン 常石敬一訳 『コペルニクス革命』 講談社学術文庫 トーマス・クーン(1922-1996)の『コペルニクス革命』を読了しました。『科学革命の構造』を著して科学哲学の世界に喧々囂々の議論を巻き起こす前の「科学史家」クーンの著作です。本書に…

野家啓一『現代思想の冒険者たち 第24巻 クーン―パラダイム』

野家啓一 『現代思想の冒険者たち 第24巻 クーン―パラダイム』 講談社 野家啓一の『現代思想の冒険者たち 第24巻 クーン―パラダイム』を読了しました。「通約不可能性」に関する擁護を中心に読み込んで、その点に関する自分の理解を今一度補強したいというの…

乗代雄介『本物の読書家』

乗代雄介 『本物の読書家』 講談社 乗代雄介の『本物の読書家』を読了しました。表題作である「本物の読書家」と「未熟な同感者」の二作が収録されています。縦横無尽に張り巡らされた古今東西の文学作品に関する言及や、ミステリー小説のように練られたプロ…

ニコルソン・ベイカー『中二階』

ニコルソン・ベイカー 岸本佐知子訳 『中二階』 白水Uブックス ニコルソン・ベイカー(1957-)の『中二階』を読了しました。本書は、切れた靴紐を買ってオフィスへと戻る途中のサラリーマンが、中二階にある自らの職場へと戻るためにエスカレーターへと向か…

カルミネ・アバーテ『帰郷の祭り』

カルミネ・アバーテ 栗原俊秀訳 『帰郷の祭り』 未知谷 カルミネ・アバーテ(1954-)の『帰郷の祭り』を読了しました。アバーテの作品を読むのはこれが三作目なのですが、本書はこれまでに読んだ彼の作品の中で最も古い時代のもの。訳者解説によれば、他の作…

J・M・クッツェー『イエスの幼子時代』

J・M・クッツェー 鴻巣友季子訳 『イエスの幼子時代』 早川書房 J・M・クッツェー(1940-)の『イエスの幼子時代』を読了しました。2013年に刊行された本書は、2016年の『イエスの学校時代』(翻訳は近刊)、そして2019年の“The Death of Jesus”の三部作の最…

磯崎憲一郎『電車道』

磯﨑憲一郎 『電車道』 新潮文庫 磯﨑憲一郎の『電車道』を読了しました。文章も滑らかで引っかかることなく読むことができる物語ですが、約100年間に及ぶ私鉄電車の近代史を背景に、それぞれの人生を生きる幾人かの登場人物たちの姿は、どこか不思議な印象…

アンナ・カヴァン『アサイラム・ピース』

アンナ・カヴァン 山田和子訳 『アサイラム・ピース』 ちくま文庫 アンナ・カヴァン(1901-1968)の『アサイラム・ピース』を読了しました。彼女の作品を読むのは『氷』に引き続いてのことです。本書はやや長めの短編作品である表題作と、文字通りの短編13篇…

Ian McEwan "The Cockroach"

Ian McEwan "The Cockroach" Jonathan CapeIan McEwanの "The Cockroach"を読了しました。今となっては遠い昔のことのようにも思われますが、ヨーロッパ旅行の際にドイツの空港で機内での暇つぶしのために購入して、そのまま少しずつ読み進めていたのが本書…

ウラジーミル・ナボコフ『淡い焰』

ウラジーミル・ナボコフ 森慎一郎訳 『淡い焰』 作品社 ウラジーミル・ナボコフ(1899-1977)の『淡い焰』を読了しました。本書の原題は“Pale Fire”で、かつては『青白い炎』という邦題で刊行されていましたが、この森氏による新訳ではより現代に近いニュア…

古川日出男『ルート350』

古川日出男 『ルート350』 講談社文庫 古川日出男の『ルート350』を読了しました。「物語」と表現しても良いし、本書における表現にならって「レプリカ」と読んでもいいわけですが、そこに立ち上がってくるものの助けを借りながら、あるいはそれに対して抗い…

ヘミングウェイ『勝者に報酬はない・キリマンジャロの雪 ―ヘミングウェイ全短編2―』

ヘミングウェイ 高見浩訳 『勝者に報酬はない・キリマンジャロの雪 ―ヘミングウェイ全短編2―』 新潮文庫 ヘミングウェイ(1899-1961)の『勝者に報酬はない・キリマンジャロの雪 ―ヘミングウェイ全短編2―』を読了しました。1928年にパリからフロリダ半島沖に…