文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

2020-07-01から1ヶ月間の記事一覧

大江健三郎・古井由吉『文学の淵を渡る』

大江健三郎・古井由吉 『文学の淵を渡る』 新潮文庫 大江健三郎と古井由吉の対談集『文学の淵を渡る』を読了しました。戦後日本を代表する作家である大江健三郎と古井由吉との間で行われた、古くは1993年、最近のものでは2015年の対談を収録したのが本書です…

『対訳 イェイツ詩集』

高松雄一編 『対訳 イェイツ詩集』 岩波文庫 高松雄一編『対訳 イェイツ詩集』を読了しました。アイルランドの詩人・劇作家であるイェイツ(1865-1939)の対訳詩集で、本書には54編の詩が収録されています。二十世紀に活躍したイェイツは、世界文学の詩人と…

ディケンズ『荒涼館』

ディケンズ 佐々木徹訳 『荒涼館』 岩波文庫 ディケンズ(1812-1870)の『荒涼館』を読了しました。原題は“Bleak House”です。1852年から1853年にかけて発表された小説で、『デイヴィッド・コパフィールド』の次に書かれた作品になります。「ジャーンダイス…

Barry Stroud “The Significance of Philosophical Scepticism”

Barry Stroud “The Significance of Philosophical Scepticism” Oxford University Press Barry Stroudの “The Significance of Philosophical Scepticism”を読了しました。原著の出版は1984年で、『君はいま夢を見ていないとどうして言えるのか―哲学的懐疑…

伊藤邦武『フランス認識論における非決定論の研究』

伊藤邦武 『フランス認識論における非決定論の研究』 晃洋書房 伊藤邦武の『フランス認識論における非決定論の研究』を読了しました。ブートルー、ポアンカレ、デュルケームという日本の哲学研究史においては決して注目されてきたとはいえないフランスの3人…

ジョナサン・サフラン・フォア『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』

ジョナサン・サフラン・フォア 近藤隆文訳 『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』 NHK出版 ジョナサン・サフラン・フォア(1977-)の『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』を読了しました。“Extremely Loud and Incredibly Close”という原タ…

シュトルム『美しき誘い 他一篇』

シュトルム 国松孝二訳 『美しき誘い 他一篇』 岩波文庫 テオドール・シュトルム(1817-1888)の『美しき誘い 他一篇』を読了しました。現在はデンマーク領である北ドイツ地方に生まれたシュトルムは、法律家であり、詩人・作家でもあります。本書は表題作の…

綿矢りさ『蹴りたい背中』

綿矢りさ 『蹴りたい背中』 河出文庫 綿矢りさの『蹴りたい背中』を読了しました。芥川賞最年少受賞ということで当時も大いに話題になった本書ですが、ふと読み返してみたくなって古本屋で文庫本を購入しました。発表当時も感じましたが、文学作品としては至…

G・ガルシア=マルケス『悪い時 他9篇』

G・ガルシア=マルケス 高見英一他訳 『悪い時 他9篇』 新潮社 G・ガルシア=マルケス(1928-2014)の『悪い時 他9篇』を読了しました。1958年から1962年にかけて発表された中短編を収録した作品集です。「大佐に手紙は来ない」、「ママ・グランデの葬儀」など…

滝口悠生『ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス』

滝口悠生 『ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス』 新潮文庫 滝口悠生の『ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス』を読了しました。滝口氏が芥川賞を受賞する前年に発表した作品で、著作としては三冊目にあたるのが本書です。まさに「体験」という他はない…

カルヴィーノ『まっぷたつの子爵』

カルヴィーノ 川島英昭訳 『まっぷたつの子爵』 岩波文庫 カルヴィーノ(1923-1985)の『まっぷたつの子爵』を読了しました。本書は戦後のイタリアを代表する作家のひとりであるカルヴィーノが比較的初期に発表した作品です。戦中・戦後のイタリアを代表する…

閻連科『年月日』

閻連科 谷川毅訳 『年月日』 白水社 閻連科(1958-)の『年月日』を読了しました。フランツ・カフカ賞の受賞者であり、現代中国で最も注目を集める作家の一人である閻連科ですが、本書『年月日』は論争を呼ぶ数々の問題作とは少し毛色が違っていて、日照りの…

J・L・ボルヘス『詩という仕事について』

J・L・ボルヘス 鼓直訳 『詩という仕事について』 岩波文庫 J・L・ボルヘス(1899-1986)の『詩という仕事について』を読了しました。本書はアルゼンチン出身の作家・ボルヘスが1967年から68年にかけてハーバード大学で行った詩学講義の記録です。古今の文学…

スティーヴン・キング『ゴールデンボーイ』

スティーヴン・キング 浅倉久志訳 『ゴールデンボーイ』 新潮文庫 スティーヴン・キング(1947-)の『ゴールデンボーイ』を読了しました。『スタンド・バイ・ミー』との二分冊で出版された“Different Seasons”の「春夏編」に当たる作品で、「刑務所のリタ・…

クッツェー『鉄の時代』

クッツェー くぼたのぞみ訳 『鉄の時代』 河出書房新社 クッツェー(1940-)の『鉄の時代』を読了しました。池澤夏樹氏による個人編集の「世界文学全集」の一冊ですが、最近になって文庫化されたようです。その前に本書を購入した私は、タイミング的にどこか…

ジョージ・ソーンダーズ『十二月の十日』

ジョージ・ソーンダーズ 岸本佐知子訳 『十二月の十日』 河出書房新社 ジョージ・ソーンダーズ(1958-)の『十二月の十日』を読了しました。2017年のブッカー賞受賞作である『リンカーンとさまよえる霊魂たち』に続く、ソーンダーズ二冊目の読書となります。…

ロバート・A・ハインライン『輪廻の蛇』

ロバート・A・ハインライン 矢野徹・他訳 『輪廻の蛇』 ハヤカワ文庫 ロバート・A・ハインライン(1907-1988)の『輪廻の蛇』を読了しました。アメリカのSF作家・ハインラインの短編集です。原書の表題作は、本作とは異なり「ジョナサン・ホーグ氏の不愉快な…

バルガス=リョサ『密林の語り部』

バルガス=リョサ 西村英一郎訳 『密林の語り部』 岩波文庫 バルガス=リョサ(1936-)の『密林の語り部』を読了しました。本書が発表されたのは1987年のことで、大統領選に出馬する1990年の少し前ということになります。第二作『緑の家』でも描かれたアマゾン…

フィリップ・ロス『背信の日々』

フィリップ・ロス 宮本陽吉訳 『背信の日々』 集英社 フィリップ・ロス(1933-2018)の『背信の日々』を読了しました。本書は作家であるネイサン・ザッカーマンを主人公(といってよいのか分かりませんが)とする作品群のひとつで、原題は“The Counterlife”…

青木淳悟『匿名芸術家』

青木淳悟 『匿名芸術家』 講談社 青木淳悟の『匿名芸術家』を読了しました。「四十日と四十夜のメルヘン」で新潮新人賞を受賞してデビューした青木氏ですが、本作はその前日譚というか創作秘話のようなものを、いつもの如く奇妙な小説仕立てで描いてみせた作…

スティーブン・キング『スタンド・バイ・ミー』

スティーブン・キング 山田順子訳 『スタンド・バイ・ミー』 新潮文庫 スティーブン・キング(1947-)の『スタンド・バイ・ミー』を読了しました。“Different Seasons”と題された(ホラーではない)4篇の中編小説からなる作品集としてアメリカで刊行された原…