文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

2021-03-01から1ヶ月間の記事一覧

ドン・デリーロ『ボディ・アーティスト』

ドン・デリーロ 上岡伸雄訳 『ボディ・アーティスト』 ちくま文庫 ドン・デリーロ(1936-)の『ボディ・アーティスト』を読了しました。2001年に発表された作品で、文庫本の翻訳で約200ページほどの分量です。 タイトルとなっている「ボディ・アーティスト」…

J・M・G・ル・クレジオ『調書』

J・M・G・ル・クレジオ 豊崎光一訳 『調書』 新潮社 J・M・G・ル・クレジオ(1940-)の『調書』を読了しました。1963年に発表された本書はル・クレジオのデビュー作です。『大洪水』を読んだときにも感じたことですが、若き才能がほとばしる様を見せ付けられ…

ミシェル・ウエルベック『服従』

ミシェル・ウエルベック 大塚桃訳 『服従』 河出文庫 ミシェル・ウエルベック(1958-)の『服従』を読了しました。2015年に発表された本書は、これまでの彼の著作のどれにも増して論争(そしてある場合には実際的な暴力)の引き金になったといわれる作品です…

フィリップ・K・ディック『死の迷路』

フィリップ・K・ディック 山形浩生訳 『死の迷路』 ハヤカワ文庫 フィリップ・K・ディック(1928-1982)の『死の迷路』を読了しました。1970年に発表された作品で、ディック最盛期の作品と言ってよいのでしょうか。本書の帯には恩田陸氏による推薦文として「…

G・バタイユ『眼球譚〔初稿〕』

G・バタイユ 生田耕作訳 『眼球譚〔初稿〕』 河出文庫 G・バタイユ(1897-1962)の『眼球譚〔初稿〕』を読了しました。フランスの思想家であるバタイユが1928年に発表した小説です。当時は「オーシュ卿」という筆名で発表され、後に改稿された新版が出版され…

アーダベルト・シュティフター『書き込みのある樅の木』

アーダベルト・シュティフター 磯崎康太郎編訳 『書き込みのある樅の木』 松籟社 アーダベルト・シュティフター(1805-1868)の『書き込みのある樅の木』を読了しました。松籟社から出版されている「シュティフター・コレクション」の4巻目です。本書には標…

ウィリアム・シェイクスピア『じゃじゃ馬ならし』

ウィリアム・シェイクスピア 小田島雄志訳 『じゃじゃ馬ならし』 白水Uブックス ウィリアム・シェイクスピア(1564-1616)の『じゃじゃ馬ならし』を読了しました。学生の頃に新潮文庫の翻訳で読んだ記憶があるのですが、細かい筋立てはすっかり忘れてしまっ…

J・D・サリンジャー『大工よ、屋根の梁を高く上げよ シーモア―序章―』

J・D・サリンジャー 野崎孝・井上謙治訳 『大工よ、屋根の梁を高く上げよ シーモア―序章―』 新潮文庫 J・D・サリンジャー(1919-2010)の『大工よ、屋根の梁を高く上げよ シーモア―序章―』を読了しました。いわゆる「グラース家サーガ」で描かれる七人兄弟の…

ジェイムズ・エルロイ『ブラック・ダリア』

ジェイムズ・エルロイ 吉野美恵子訳 『ブラック・ダリア』 文春文庫 ジェイムズ・エルロイ(1948-)の『ブラック・ダリア』を読了しました。長い間、本棚に置いたまま読むことがなかった本なのですが、何となくこのタイミングで手に取って読み進めることにな…

村上春樹『一人称単数』

村上春樹 『一人称単数』 文藝春秋 村上春樹の『一人称単数』を読了しました。2018年から2020年にかけて雑誌『文學界』に発表された7本の短編作品と書き下ろし作品1編を含む短編集です。これまでの人生を少しずつ総決算していくというと、いささか大げさな言…

山下昇・渡辺克昭編『二〇世紀アメリカ文学を学ぶ人のために』

山下昇・渡辺克昭編 『二〇世紀アメリカ文学を学ぶ人のために』 世界思想社 山下昇・渡辺克昭編『二〇世紀アメリカ文学を学ぶ人のために』を読了しました。世界思想社の「学ぶ人のために」シリーズ(?)の一冊です。「時代を映す鏡としての文学」、「多文化…

ジッド『未完の告白』

ジッド 新庄嘉章訳 『未完の告白』 新潮文庫 ジッド(1869-1951)の『未完の告白』を読了しました。『女の学校』、『ロベール』と共に三部作を成す作品とされ、原題は本書の訳題とは異なる『ジュヌヴィエーヴ』です。妻、夫、そして娘のそれぞれの視点から捉…

ティム・オブライエン『世界のすべての七月』

ティム・オブライエン 村上春樹訳 『世界のすべての七月』 文春文庫 ティム・オブライエン(1946-)の『世界のすべての七月』を読了しました。原題は"July, July"で、2002年に発表されています。同じく文春文庫から刊行されている『本当の戦争の話をしよう』…

G・ガルシア=マルケス『コレラの時代の愛』

G・ガルシア=マルケス 木村榮一訳 『コレラの時代の愛』 新潮社 G・ガルシア=マルケス(1928-2014)の『コレラの時代の愛』を読了しました。1985年に発表された本作は、『予告された殺人の記録』(1981)と『迷宮の将軍』(1989)の間の時期に書かれています…

ヘニング・マンケル『五番目の女』

ヘニング・マンケル 柳沢由実子訳 『五番目の女』 創元推理文庫 ヘニング・マンケル(1948-2015)の『五番目の女』を読了しました。スウェーデンの推理作家・児童文学作家であるマンケルの小説で、刑事クルト・ヴァランダーを主人公とするシリーズの一作です…

シオドア・スタージョン『輝く断片』

シオドア・スタージョン 大森望編 『輝く断片』 河出文庫 シオドア・スタージョン(1918-1985)の『輝く断片』を読了しました。スタージョンはSFファンのみならず、いわゆる主流文学の文脈においても(近年)評価の高い作家です。本書にはなかなかに振り切っ…

ジーン・ウェブスター『続あしながおじさん』

ジーン・ウェブスター 畔柳和代訳 『続あしながおじさん』 新潮文庫 ジーン・ウェブスター(1876-1916)の『続あしながおじさん』を読了しました。児童文学の名作『あしながおじさん』の続編にあたる作品です。しかしながら、主人公は前作のジュディから孤児…

フレッド・ドレツキ『行動を説明する 因果の世界における理由』

フレッド・ドレツキ 水本正春訳 『行動を説明する 因果の世界における理由』 勁草書房 フレッド・ドレツキ(1932-2013)の『行動を説明する 因果の世界における理由』を読了しました。原著が出版されたのは1988年で、著者のドレツキはクワインの「自然化され…

ジェニファー・イーガン『ならずものがやってくる』

ジェニファー・イーガン 谷崎由依 『ならずものがやってくる』 ハヤカワ文庫 ジェニファー・イーガン(1962-)の『ならずものがやってくる』を読了しました。2011年のピュリッツァー賞受賞作である本書は、音楽のコンセプトアルバムを形作るように配列された…

長嶋有『猛スピードで母は』

長嶋有 『猛スピードで母は』 文春文庫 長嶋有(1972-)の『猛スピードで母は』を読了しました。2002年に第126回芥川賞を受賞した表題作と、文学界新人賞を受賞した氏のデビュー作である「サイドカーに犬」の二篇が収録されています。輪郭のくっきりとした登…

アリス・マンロー『林檎の木の下で』

アリス・マンロー 小竹由美子訳 『林檎の木の下で』 新潮社 アリス・マンロー(1931-)の『林檎の木の下で』を読了しました。2006年に発表された本書はスコットランドから海を渡ってアメリカ大陸へと移住したマンローの家系の歴史を綴る短編集です。原書のタ…

バーネット『秘密の花園』

フランシス・ホジソン・バーネット 畔柳和代訳 『秘密の花園』 新潮文庫 フランシス・ホジソン・バーネット(1849-1924)の『秘密の花園』を読了しました。『小公女』の著者でもあるバーネットが1911年に刊行した小説です。イギリス植民地時代のインドに暮ら…

グレアム・グリーン『情事の終り』

グレアム・グリーン 上岡伸雄訳 『情事の終り』 新潮文庫 グレアム・グリーン(1904-1991)の『情事の終り』を読了しました。ミステリ小説の書き手というイメージがあるのがグリーンという作家だと思うのですが、いわゆる主流文学の文脈でも評価が高まってい…

ル・クレジオ『悪魔祓い』

ル・クレジオ 高山鉄男訳 『悪魔祓い』 岩波文庫 ル・クレジオ(1940-)の『悪魔祓い』を読了しました。20代で作家デビューを果たした著者は、兵役義務の代替として派遣されたメキシコでの経験がきっかけとなってネイティブアメリカンの文化に魅せられ、そこ…

ヘミングウェイ『蝶々と戦車・何を見ても何かを思いだす ―ヘミングウェイ全短編3―』

ヘミングウェイ 高見浩訳 『蝶々と戦車・何を見ても何かを思いだす ―ヘミングウェイ全短編3―』 新潮文庫 ヘミングウェイ(1899-1961)の『蝶々と戦車・何を見ても何かを思いだす ―ヘミングウェイ全短編3―』を読了しました。キューバでの暮らし、スペイン内戦…

『パウル・ツェラン全詩集 Ⅰ』

中村朝子訳 『パウル・ツェラン全詩集 Ⅰ』 青土社 『パウル・ツェラン全詩集 Ⅰ』を読了しました。パウル・ツェラン(1920-1970)はドイツ系ユダヤ人の詩人の詩人で、両親はナチスにより強制収用所で死を迎え、パウル・ツェラン自身も強制労働に従事させられ…

乗代雄介『ミック・エイヴォリーのアンダーパンツ』

乗代雄介 『ミック・エイヴォリーのアンダーパンツ』 国書刊行会 乗代雄介(1986-)の『ミック・エイヴォリーのアンダーパンツ』を読了しました。本書は著者が15年以上にわたって書き継いだブログ記事を著者自選・全面改稿して書籍化したものとのこと。古い…

有栖川有栖『インド倶楽部の謎』

有栖川有栖 『インド倶楽部の謎』 講談社文庫 有栖川有栖の『インド倶楽部の謎』を読了しました。最近はあまりミステリー小説を読まなくなってしまったのですが、有栖川氏の作品は気になって読んでしまいます。本書は氏の敬愛するエラリー・クイーンに倣って…