文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

2021-07-01から1ヶ月間の記事一覧

フローベール『サラムボー』

フローベール 中條屋進訳 『サラムボー』 岩波文庫 フローベール(1821-1880)の『サラムボー』を読了しました。古代カルタゴを舞台に描かれたフローベールの長編第二作目です。前作である『ボヴァリー夫人』とはうってかわって紀元前の歴史に題材を得たフロ…

スコット・フィッツジェラルド『ある作家の夕刻 フィッツジェラルド後期作品集』

スコット・フィッツジェラルド 村上春樹編訳 『ある作家の夕刻 フィッツジェラルド後期作品集』 中央公論新社 『ある作家の夕刻 フィッツジェラルド後期作品集』を読了しました。フィッツジェラルドの晩年にあたる1930年代に書かれた小説とエッセイを、村上…

フローベール『三つの物語』

フローベール 谷口亜沙子訳 『三つの物語』 光文社古典新訳文庫 フローベール(1821-1880)の『三つの物語』を読了しました。フローベールが晩年に発表した「素朴な人」「聖ジュリアン伝」「ヘロディアス」の三編が収録された作品集です。未完に終わった長編…

スティーヴン・P・スティッチ『断片化する理性 認識論的プラグマティズム』

スティーヴン・P・スティッチ 薄井尚樹訳 『断片化する理性 認識論的プラグマティズム』 勁草書房 スティーヴン・P・スティッチ(1943-)の『断片化する理性 認識論的プラグマティズム』を読了しました。認識論を自然化するというクワインの標榜したプロジェ…

チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ『アメリカーナ』

チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ くぼたのぞみ訳 『アメリカーナ』 河出文庫 チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ(1977-)の『アメリカーナ』を読了しました。アディーチェはナイジェリアの作家で、2013年に発表された長編第三作である本書は全米批評家…

ドメニコ・スタルノーネ『靴ひも』

ドメニコ・スタルノーネ 関口英子訳 『靴ひも』 新潮社 ドメニコ・スタルノーネ(1943-)の『靴ひも』を読了しました。本書の裏表紙のカバーには、イタリアへと移住したジュンパ・ラヒリが惚れ込んで英訳したというエピソードが記されています。短いながら、…

磯﨑憲一郎『往古来今』

磯﨑憲一郎 『往古来今』 文春文庫 磯﨑憲一郎の『往古来今』を読了しました。5篇の短編小説が収められた作品集です。磯﨑氏は小説でしか描けないものを表現するのが上手な作家というイメージなのですが、本書に収録されたいずれの作品も小説ならではの時間…

ウィリアム・ギャディス『JR』

ウィリアム・ギャディス 木原善彦訳 『JR』 国書刊行会 ウィリアム・ギャディス(1922-1998)の『JR』を読了しました。1975年に発表された本書の原題は“JR FAMILY OF COMPANIES”で、11歳の少年JRがひょんなことから手にした株式をもとに巨大コングロマリット…

ザミャーチン『われら』

ザミャーチン 松下隆志訳 『われら』 光文社古典新訳文庫 エヴゲーニイ・ザミャーチン(1884-1937)の『われら』を読了しました。ロシアの作家ザミューチンの代表作です。ハクスリーの『すばらしい新世界』やオーウェルの『1984年』に先行して書かれたディス…

ジョン・ロック『統治二論』

ジョン・ロック 加藤節訳 『統治二論』 岩波文庫 ジョン・ロック(1632-1704)の『統治二論』を読了しました。ロックの政治哲学上の主著といえる作品で、文字通り「統治(government)」に関する二つの論考が収録されています。 「統治について」と題された…

G・ガルシア=マルケス『愛その他の悪霊について』

G・ガルシア=マルケス 旦敬介訳 『愛その他の悪霊について』 新潮社 G・ガルシア=マルケス(1928-2014)の『愛その他の悪霊について』を読了しました。『コレラの時代の愛』と同様に愛をテーマにした作品です。短めの長編小説というか、中編小説といっても差…

鈴木貴之編著『実験哲学入門』

鈴木貴之編著 『実験哲学入門』 勁草書房 鈴木貴之編著『実験哲学入門』を読了しました。哲学という営みにおいて行われてきた概念分析においては、哲学者が様々な概念の内実を明らかにするために、自身(たち)の「直観」への適合性を問題にしてきたのですが…

ダンテ『神曲 天国篇』

ダンテ 平川祐弘訳 『神曲 天国篇』 河出文庫 ダンテ(1265-1321)の『神曲 天国篇』を読了しました。煉獄に続いて天国へと至るダンテの道行きはいよいよ本巻で神を見るに至りフィナーレを迎えることとなります。キリスト教文化に馴染みの薄い者にとってはな…

ダンテ『神曲 煉獄篇』

ダンテ 平川祐弘訳 『神曲 煉獄篇』 河出文庫 ダンテ(1265-1321)の『神曲 煉獄篇』を読了しました。ウェルギリウスとともにダンテが地獄に続いて訪れたのは煉獄(Purgatorio)で、天国を訪れることを約束された者たちが現世の罪を浄める場とされています。…

ダンテ『神曲 地獄篇』

ダンテ 平川祐弘訳 『神曲 地獄篇』 河出文庫 ダンテ(1265-1321)の『神曲 地獄篇』を読了しました。ルネサンス文化の先駆者であり、イタリア最大の詩人であるダンテ・アリギエーリの書いた“La Divina Commedia”の第一部をなす「地獄篇(Inferno)」です。…

J・アップダイク『日曜日だけの一カ月』

J・アップダイク 井上謙治訳 『日曜日だけの一カ月』 新潮社 J・アップダイク(1932-2009)の『日曜日だけの一カ月』を読了しました。原題は“A Month of Sundays”で発表されたのは1975年のこと、ちょうど中期の作品といってよいのでしょうか。牧師の姦通とい…

ブレット・イーストン・エリス『アメリカン・サイコ』

ブレット・イーストン・エリス 小川高義訳 『アメリカン・サイコ』 角川文庫 ブレット・イーストン・エリス(1964-)の『アメリカン・サイコ』を読了しました。かつて映画化もされて良くも悪くも話題になった作品ですが、それから20年以上経ってからの読書と…

ジョン・アーヴィング『また会う日まで』

ジョン・アーヴィング 小川高義訳 『また会う日まで』 新潮社 ジョン・アーヴィング(1942-)の『また会う日まで』を読了しました。2005年に発表されたアーヴィングの11作目の長編小説で、原題は“Until I Find You”です。父を知らずに育った主人公のジャック…

中村文則『王国』

中村文則 『王国』 河出文庫 中村文則の『王国』を読了しました。大江健三郎賞を受賞した『掏摸』の姉妹編といわれる作品で、前作で圧倒的な存在感を放っていた木崎という人物が本書にも登場します。前作を読んだのがいつのことだったか覚えてはいないのです…

スティーヴン・ミルハウザー『三つの小さな王国』

スティーヴン・ミルハウザー 柴田元幸訳 『三つの小さな王国』 白水Uブックス スティーヴン・ミルハウザー(1943-)の『三つの小さな王国』を読了しました。1993年に発表された本書の原題は“Little Kingdoms”で、三篇の中編作品が収録されています。「J・フ…

カルミネ・アバーテ『海と山のオムレツ』

カルミネ・アバーテ 関口英子訳 『海と山のオムレツ』 新潮社 カルミネ・アバーテ(1954-)の『海と山のオムレツ』を読了しました。イタリア南部のカラブリア州出身の作家、アバーテによる自伝的短編小説集です。いずれも著者自身が出会ってきたと思しき食が…

アンドレイ・サプコフスキ『ウィッチャーⅠ エルフの血脈』

アンドレイ・サプコフスキ 川野靖子・天沼春樹訳 『ウィッチャーⅠ エルフの血脈』 ハヤカワ文庫 アンドレイ・サプコフスキの『ウィッチャーⅠ エルフの血脈』を読了しました。ポーランドの国民的作家であるというサプコフスキが著したファンタジー作品シリー…