文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

2022-11-01から1ヶ月間の記事一覧

コリン・デクスター『謎まで三マイル』

コリン・デクスター 大庭忠男訳 『謎まで三マイル』 ハヤカワ文庫 コリン・デクスター(1930-2017)の『謎まで三マイル』を読了しました。思考の霧の中を彷徨うことで事件の捜査を行うモース主任警部を主人公とするミステリ作品の一作です。いみじくも本書の…

フェルナンド・ペソア『[新編]不穏の書、断章』

フェルナンド・ペソア 澤田直訳 『[新編]不穏の書、断章』 平凡社ライブラリー フェルナンド・ペソア(1888-1935)の『[新編]不穏の書、断章』を読了しました。ポルトガルの詩人・作家であるフェルナンド・ペソアは、イタリアの作家であるアントニオ・タ…

アリ・スミス『冬』

アリ・スミス 木原善彦訳 『冬』 新潮社 アリ・スミス(1962-)の『冬』を読了しました。『秋』に続く四季をタイトルに冠した小説作品群の第二作目となります。シリーズ全体を通して登場人物などに緩やかな繋がりがありつつ、時事を小説世界の中に取り込みな…

カズオ・イシグロ『忘れられた巨人』

カズオ・イシグロ 土屋政雄訳 『忘れられた巨人』 ハヤカワ文庫 カズオ・イシグロ(1954-)の『忘れられた巨人』を読了しました。ハードカバーで刊行された当時に読んで以来、訳7年振りの再読となりました。物語の鍵となる霧の存在感とそれがもたらす忘却の…

『ヘンリー・ジェイムズ作品集2 ポイントンの蒐集品 メイジーの知ったこと 檻の中』

大西昭男 多田敏男 川西進 青木次生 訳 『ヘンリー・ジェイムズ作品集2 ポイントンの蒐集品 メイジーの知ったこと 檻の中』 国書刊行会 『ヘンリー・ジェイムズ作品集2 ポイントンの蒐集品 メイジーの知ったこと 檻の中』を読了しました。収録作品のうち「ポ…

阿部和重『グランド・フィナーレ』

阿部和重 『グランド・フィナーレ』 講談社文庫 阿部和重の『グランド・フィナーレ』を読了しました。2005年に刊行された本書は第132回芥川賞受賞作なのですが、作者がそれ以前に発表した『インディビジュアル・プロジェクション』といった作品や、作者の故…

ヘッセ『デーミアン』

ヘッセ 酒寄進一訳 『デーミアン』 光文社古典新訳文庫 ヘッセ(1877-1962)の『デーミアン』を読了しました。学生時代に岩波文庫で読んだときの訳題の表記は『デミアン』だったと思うのですが、こちらの方が原語の発音に近いということなのでしょうか。1919…

『パウル・ツェラン全詩集Ⅲ』

中村朝子訳 『パウル・ツェラン全詩集Ⅲ』 青土社 『パウル・ツェラン全詩集Ⅲ』を読了しました。本書の内容については、巻末の訳者あとがきの中で次のように述べられています。 この訳詩集の底本には、全五巻からなる、現在刊行されている唯一のパウル・ツェ…

ヘミングウェイ『誰がために鐘は鳴る』

ヘミングウェイ 高見浩訳 『誰がために鐘は鳴る』 新潮文庫 ヘミングウェイ(1899-1961)の『誰がために鐘は鳴る』を読了しました。左派と右派に別れて苛烈な争いが行われたスペイン内戦を舞台にした小説で、長編第一作である『日はまた昇る』に続いて、スペ…