文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

2023-01-01から1年間の記事一覧

ル・クレジオ『嵐』

ル・クレジオ 中地義和訳 『嵐』 作品社 ル・クレジオ(1940-)の『嵐』を読了しました。表題作ともなっている「嵐」と「わたしは誰?」という邦題の付された二篇の中編小説が収録されています。前者は作者が深い関心を寄せる国である韓国南部の小島を舞台に…

シェイクスピア『ヴェニスの商人』

シェイクスピア 福田恆存訳 『ヴェニスの商人』 新潮文庫 シェイクスピア(1564-1616)の『ヴェニスの商人』を読了しました。岩波文庫、白水Uブックス、ちくま文庫のそれぞれの訳で読んだ作品で、言わずと知れた喜劇の傑作なのですが、今回の読書で印象に残…

早坂吝『アリス・ザ・ワンダーキラー 少女探偵殺人事件』

早坂吝 『アリス・ザ・ワンダーキラー 少女探偵殺人事件』 光文社文庫 早坂吝の『アリス・ザ・ワンダーキラー 少女探偵殺人事件』を読了しました。ルイス・キャロルの不思議の国のアリスをモチーフにしたパズルに、作者らしい企みが織り込まれたミステリー作…

須藤古都離『ゴリラ裁判の日』

須藤古都離 『ゴリラ裁判の日』 講談社 須藤古都離の『ゴリラ裁判の日』を読了しました。第64回メフィスト賞受賞作ですが、新本格ミステリーの文脈で読むといささか肩透かしを食ってしまうと思います。よく下調べの効いたゴリラの描写に加えて、裁判の判決を…

京極夏彦『姑獲鳥の夏』

京極夏彦 『姑獲鳥の夏』 講談社文庫 京極夏彦の『姑獲鳥の夏』を読了しました。ミステリーとしてというよりは、その設定やキャラクターにおいて人気が出た作品なのだと思うのですが、ミステリーの文脈ではなかなかに大胆なことが試みられていて、何とも複雑…

デイヴィッド・マークソン『ウィトゲンシュタインの愛人』

デイヴィッド・マークソン 木原善彦訳 『ウィトゲンシュタインの愛人』 国書刊行会 デイヴィッド・マークソン(1927-2010)の『ウィトゲンシュタインの愛人』を読了しました。本書の帯にある「煽り文」には〈アメリカ実験小説の最高到達点〉と書かれていて、…

シェイクスピア『ハムレット』

シェイクスピア 福田恆存訳 『ハムレット』 新潮文庫 シェイクスピア(1564-1616)の『ハムレット』を読了しました。今回は新潮文庫の福田恆存氏の訳での再読となります。主人公であるハムレットの言動のいかにも謎めいた部分というか、どうにも解釈しきれな…

石持浅海『賛美せよ、と成功は言った』

石持浅海 『賛美せよ、と成功は言った』 祥伝社文庫 石持浅海の『賛美せよ、と成功は言った』を読了しました。不思議な感覚のもとで展開されていく倒叙小説で、シリーズ作品に馴染みのある読者にとっては、いつものように面白く読むことができる作品になって…

マイクル・コナリー『潔白の法則』

マイクル・コナリー 古沢嘉通訳 『潔白の法則』 講談社文庫 マイクル・コナリーの『潔白の法則』を読了しました。「リンカーン弁護士」ミッキー・ハラーを主人公に据えた作品の第六弾です。主人公が陥っている窮地とタイトルに込められた矜持と、そしてそれ…

赤川次郎『霧の夜にご用心』

赤川次郎 『霧の夜にご用心』 角川文庫 赤川次郎の『霧の夜にご用心』を読了しました。主人公の人物造形に何ともいえない危うさが残る作品で、作者の力技によってかろうじて成立しているといった印象です。 【満足度】★★★☆☆

吉村達也『トワイライトエクスプレスの惨劇』

吉村達也 『トワイライトエクスプレスの惨劇』 徳間文庫 吉村達也の『トワイライトエクスプレスの惨劇』を読了しました。本格ミステリーを期待して読むとおそらくはがっかりしてしまうのでしょう。 【満足度】★★☆☆☆

円居挽『カイジ ファイナルゲーム 小説版』

円居挽 『カイジ ファイナルゲーム 小説版』 講談社文庫 円居挽の『カイジ ファイナルゲーム 小説版』を読了しました。次は作者のオリジナルのミステリー小説を楽しみに待ちたいと思います。 【満足度】★★★☆☆

我孫子武丸『眠り姫とバンパイア』

我孫子武丸 『眠り姫とバンパイア』 講談社文庫 我孫子武丸の『眠り姫とバンパイア』を読了しました。ミステリーランドの一冊として上梓された作品の文庫版です。作者らしい水準の高いミステリー作品となっています。 【満足度】★★★☆☆

綾辻行人『鳴風荘事件 殺人方程式Ⅱ』

綾辻行人 『鳴風荘事件 殺人方程式Ⅱ』 講談社文庫 綾辻行人の『鳴風荘事件 殺人方程式Ⅱ』を読了しました。いわゆる狭い意味での本格ミステリーに正面から取り組んだ作品で、読み応えがあります。解けそうで解けない真相のレベル感も絶妙で、残りの5%から10%…

石持浅海『殺し屋、続けてます。』

石持浅海 『殺し屋、続けてます。』 文春文庫 石持浅海の『殺し屋、続けてます。』を読了しました。ユニークな設定のミステリー短編集の続編です。前作よりもいささかパワーは落ちているような気もするのですが、楽しく読むことはできました。 【満足度】★★★…

宗田理『立て、真田十勇士』

宗田理 『立て、真田十勇士』 角川文庫 宗田理の『立て、真田十勇士』を読了しました。子どもの頃に読んだときはもっと面白かったような記憶があるのですが、今読むとプロットにもキャラクターにも無理ばかりが感じられてしまって、一体どうしたことなのだろ…

少路幸也『空を見上げる古い歌を口ずさむ』

少路幸也 『空を見上げる古い歌を口ずさむ』 光文社文庫 少路幸也の『空を見上げる古い歌を口ずさむ』を読了しました。メフィスト賞受賞作品とのことですが、新本格ミステリー作品を期待して読むと肩透かしをくってしまうのではないかと思います。人情小説を…

吉村達也『「シアトルの魔神」殺人事件』

吉村達也 『「シアトルの魔神」殺人事件』 角川文庫 吉村達也の『「シアトルの魔神」殺人事件』を読了しました。ワントリックの出来としては、同じシリーズの他作品に軍配が上がります。 【満足度】★★☆☆☆

我孫子武丸『警視庁特捜班ドットジェイピー』

我孫子武丸 『警視庁特捜班ドットジェイピー』 光文社文庫 我孫子武丸の『警視庁特捜班ドットジェイピー』を読了しました。グロテスクなふざけ方が特徴的で、これくらいのことをやってこその作品の面白さなのかと感じさせられます。 【満足度】★★★☆☆

万城目学『鴨川ホルモー』

万城目学 『鴨川ホルモー』 角川文庫 万城目学の『鴨川ホルモー』を読了しました。青春小説としてよく書けていると思うのですが、ファンタジー小説としての骨格も意外にしっかりしていて、楽しく読むことができます。 【満足度】★★★☆☆

宗田理『2年A組探偵局 魔女狩り学園』

宗田理 『2年A組探偵局 魔女狩り学園』 角川文庫 宗田理の『2年A組探偵局 魔女狩り学園』を読了しました。作者にしては珍しくジュブナイルのミステリーとしては王道的な展開を見せるのですが、その分作者らしいはみ出した部分が少ないような気もします。 【…

島田荘司『展望塔の殺人』

島田荘司 『展望塔の殺人』 光文社文庫 島田荘司の『展望塔の殺人』を読了しました。作者の当時の問題意識やこだわりのようなものが見える短編集になっていて、今読み返してみると興味深いものがあります。 【満足度】★★★☆☆

村上春樹・河合隼雄『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』

村上春樹・河合隼雄 『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』 新潮文庫 村上春樹・河合隼雄の『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』を読了しました。対談集という形式の作品なのですが、『ねじまき鳥クロニクル』の解題として興味深く読むことができるものになって…

吉村達也『白骨温泉殺人事件』

吉村達也 『白骨温泉殺人事件』 講談社文庫 吉村達也の『白骨温泉殺人事件』を読了しました。シリーズ?の探偵役変更を図ったかと思しきプロットはうまくいっているようなそうでもないような、不思議な構成になっています。 【満足度】★★★☆☆

清涼院流水『パーフェクト・ワールド What a perfect world! Book.6』

清涼院流水 『パーフェクト・ワールド What a perfect world! Book.6』 講談社 清涼院流水の『パーフェクト・ワールド What a perfect world! Book.6』を読了しました。物語りも中盤に突入といったところでしょうか、京都観光気分も味わえる不思議な小説です…

ジョージ・ソーンダーズ『短くて恐ろしいフィルの時代』

ジョージ・ソーンダーズ 岸本佐知子訳 『短くて恐ろしいフィルの時代』 河出文庫 ジョージ・ソーンダーズ(1958-)の『短くて恐ろしいフィルの時代』を読了しました。ブッカー賞作家であるソーンダーズの作品を読むのは本書で三冊目となります。タイトルにも…

島田荘司『Classical Fantasy Within 第七話 アル・ヴァジャイヴ戦記 再生の女神、アイラ』

島田荘司 『Classical Fantasy Within 第七話 アル・ヴァジャイヴ戦記 再生の女神、アイラ』 講談社 島田荘司の『Classical Fantasy Within 第七話 アル・ヴァジャイヴ戦記 再生の女神、アイラ』を読了しました。シリーズ作品の第二部というべき「アル・ヴァ…

宮部みゆき『とり残されて』

宮部みゆき 『とり残されて』 文春文庫 宮部みゆきの『とり残されて』を読了しました。7編の短編作品が収録された作品集ですが、そのテーマや雰囲気にある程度の統一感のようなものがあって、作者の力量を感じさせられる作品です。 【満足度】★★★☆☆

乾くるみ『イニシエーション・ラブ』

乾くるみ 『イニシエーション・ラブ』 文春文庫 乾くるみの『イニシエーション・ラブ』を読了しました。切れ味の鋭い結末が待っているミステリー作品です。 【満足度】★★★☆☆

赤川次郎『藤色のカクテルドレス』

赤川次郎 『藤色のカクテルドレス』 光文社文庫 赤川次郎の『藤色のカクテルドレス』を読了しました。シリーズ作品としてはややマンネリを迎えているような気もしますが、これからまたいろいろな捻りを加えられながら続いていくのでしょうか。 【満足度】★★★…