文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

2023-01-01から1ヶ月間の記事一覧

吉村達也『時の森殺人事件1』

吉村達也 『時の森殺人事件1』 中公文庫 吉村達也の『時の森殺人事件1』を読了しました。発表された当時としては最も長いミステリー作品だったとのことですが、刊行当時にわくわくしながら読んだことをよく覚えています。あらためて読み返してみて、そのテ…

大江健三郎『僕が本当に若かった頃』

大江健三郎 『僕が本当に若かった頃』 講談社文芸文庫 大江健三郎の『僕が本当に若かった頃』を読了しました。1988年から1992年にかけて発表された短編作品集です。一見したところ私小説に範を取った(それが見かけほどに単純なものではないことは本書の解説…

赤川次郎『三毛猫ホームズの怪談』

赤川次郎 『三毛猫ホームズの怪談』 角川文庫 赤川次郎の『三毛猫ホームズの怪談』を読了しました。三毛猫ホームズシリーズの第三作目でレギュラーメンバーのキャラクター性についても固まってきたというところでしょうか。正直なところ、ミステリーとしては…

アーシュラ・K・ル=グウィン『空飛び猫』

アーシュラ・K・ル=グウィン 村上春樹訳 『空飛び猫』 講談社文庫 アーシュラ・K・ル=グウィン(1929-2018)の『空飛び猫』を読了しました。SF作家として、また『ゲド戦記』などのファンタジー作品の書き手として知られる作者ですが、本書のような絵本作品…

森博嗣『すべてがFになる』

森博嗣 『すべてがFになる』 講談社文庫 森博嗣の『すべてがFになる』を読了しました。第1回メフィスト賞受賞作であり、作者のデビュー作となる本書なのですが、前者の枕詞についてはあまり意味をなさないのかもしれません。本来はシリーズ作品の第四作目と…

赤川次郎『幽霊列車』

赤川次郎 『幽霊列車』 文春文庫 赤川次郎の『幽霊列車』を読了しました。作者のデビュー作である同名の短編が収録された連作短編集です。トリッキーな設定が話題となった表題作をはじめ、本格ミステリふうの作品あり、サスペンスふうの作品ありとバラエティ…

アンドレイ・サプコフスキ『ウィッチャー短編集1 最後の願い』

アンドレイ・サプコフスキ 川野靖子訳 『ウィッチャー短編集1 最後の願い』 ハヤカワ文庫 アンドレイ・サプコフスキの『ウィッチャー短編集1 最後の願い』を読了しました。「ウィッチャー」と呼ばれる存在を主人公とするファンタジーシリーズの短編集です…

赤川次郎『琥珀色のダイアリー』

赤川次郎 『琥珀色のダイアリー』 光文社文庫 赤川次郎の『琥珀色のダイアリー』を読了しました。主人公が読者と共に年齢を重ねるという趣向の本シリーズですが、本書では19歳となり大学生になった主人公が家庭教師のアルバイト先である家庭での事件に巻き込…

歌野晶午『魔王城殺人事件』

歌野晶午 『魔王城殺人事件』 講談社文庫 歌野晶午の『魔王城殺人事件』を読了しました。低年齢層向けのミステリー叢書として、錚々たるメンバーの本格ミステリー作家が書き下ろした「ミステリーランド」の一冊として刊行されていた作品が文庫に収録されたも…

石持浅海『アイルランドの薔薇』

石持浅海 『アイルランドの薔薇』 光文社文庫 石持浅海の『アイルランドの薔薇』を読了しました。不思議な設定のクローズド・サークルを生み出すことに定評のある作者の長編第一作目にあたるのが本書です。かなり久しぶりに読み返すこととなりました。北アイ…

村上春樹・糸井重里『夢で会いましょう』

村上春樹・糸井重里 『夢で会いましょう』 講談社文庫 村上春樹と糸井重里による共著『夢で会いましょう』を読了しました。この二人が共著を出版していることにどこか懐かしい気分を覚えるのですが、いみじくも村上氏が本書の中で述べているように、収録され…

J・K・ユイスマンス『さかしま』

J・K・ユイスマンス 澁澤龍彦訳 『さかしま』 河出文庫 J・K・ユイスマンス(1848-1907)の『さかしま』を読了しました。ユイスマンスはゾラの門下グループとしてそのキャリアを出発しながら、やがてゾラの提唱する自然主義を離れて19世紀末特有の厭世観…

フィリップ・K・ディック『ヴァリス[新訳版]』

フィリップ・K・ディック 山形浩生訳 『ヴァリス[新訳版]』 ハヤカワ文庫 フィリップ・K・ディック(1928-1982)の『ヴァリス』を読了しました。カバー裏に書かれた粗筋などから、本書が問題作という位置づけであることは知っていたのですが、読み進める…

赤川次郎『薄紫のウィークエンド』

赤川次郎 『薄紫のウィークエンド』 光文社文庫 赤川次郎の『薄紫のウィークエンド』を読了しました。シリーズ四作品目で主人公は18歳の高校三年生となっています。主人公をはじめとする登場人物にもいくつかの事件が起こっていて、この頃には作者は本シリー…

有栖川有栖『論理仕掛けの奇談 有栖川有栖解説集』

有栖川有栖 『論理仕掛けの奇談 有栖川有栖解説集』 角川文庫 有栖川有栖の『論理仕掛けの奇談 有栖川有栖解説集』を読了しました。作者が他の作家のミステリ作品に寄せた解説を一冊の本にまとめたものが本書で、そのいくつかの文章は以前に読んだことがあっ…

赤川次郎『三毛猫ホームズの追跡』

赤川次郎『三毛猫ホームズの追跡』 角川文庫 赤川次郎の『三毛猫ホームズの追跡』を読了しました。国民的なと形容しても差し支えないと思うのですが、超人気シリーズの第二作目にあたる作品です。主人公の妹に恋する石津刑事、そして主人公の上司である栗原…

マイクル・コナリー『素晴らしき世界』

マイクル・コナリー 古川嘉通訳 『素晴らしき世界』 講談社文庫 マイクル・コナリーの『素晴らしき世界』を読了しました。原題は“Dark Sacred Night”なのですが、「暗く聖なる夜」という邦題の別作品が既に存在(原題は“Lost Light”)していて、これは何とも…