文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

2023-04-01から1ヶ月間の記事一覧

ホセ・ドノソ『別荘』

ホセ・ドノソ 寺尾隆吉訳 『別荘』 現代企画室 ホセ・ドノソ(1924-1996)の『別荘』を読了しました。チリの作家でラテンアメリカ作家による「ブーム」の名付け親(?)ともいえるドノソの作品を読むのは、『夜のみだらな鳥』に続いて本書が二作品目というこ…

島田荘司『最後のディナー』

島田荘司 『最後のディナー』 角川文庫 島田荘司の『最後のディナー』を読了しました。以前にハードカバーで読んだときも感じたことではあるのですが、語り手である石岡氏の落ちこぼれぶりというか、それがここまで極端に描かれてしまうといささか鼻白んでし…

村上春樹『村上朝日堂 はいほー!』

村上春樹 『村上朝日堂 はいほー!』 新潮文庫 村上春樹の『村上朝日堂 はいほー!』を読了しました。当たり前の話ではあるのですが、あらためて読み返してみると、音楽や映画の話はともかくとして、ところどころに時代性を感じます。これは裏を返してみると…

赤川次郎『孤独な週末』

赤川次郎 『孤独な週末』 角川文庫 赤川次郎の『孤独な週末』を読了しました。表題作を含めた四編が収録された短編集です。作者らしい佳作をそろえた作品集です。 【満足度】★★★☆☆

綾辻行人『殺人方程式 切断された死体の問題』

綾辻行人 『殺人方程式 切断された死体の問題』 講談社文庫 綾辻行人の『殺人方程式 切断された死体の問題』を読了しました。以前に読んだことのある光文社文庫版からいくらかの改訂があったのかどうかは解らないのですが、押さえるべきところを完全に押さえ…

赤川次郎『三毛猫ホームズの騎士道』

赤川次郎 『三毛猫ホームズの騎士道』 角川文庫 赤川次郎の『三毛猫ホームズの騎士道』を読了しました。「ヨーロッパ篇」とでもいうべき一連の作品のいわば嚆矢となる作品で、日本を離れたドイツの古城を舞台としていつものメンバーの活躍が描かれます。本格…

吉村達也『[英語が恐い]殺人事件』

吉村達也 『[英語が恐い]殺人事件』 講談社文庫 吉村達也の『[英語が恐い]殺人事件』を読了しました。祥伝社から『英語・ガイジン・恥・殺人』として刊行されていた作品の改題で、作者お得意の英語論を交えながら、これまた作者が得意とするワントリック…

森博嗣『夏のレプリカ』

森博嗣 『夏のレプリカ』 講談社文庫 森博嗣の『夏のレプリカ』を読了しました。不思議によくできた端正な作品で、シリーズの中でも特徴のある一作となっています。 【満足度】★★★☆☆

宗田理『ぼくらの天使ゲーム』

宗田理 『ぼくらの天使ゲーム』 角川文庫 宗田理の『ぼくらの天使ゲーム』を読了しました。映画化もされた『ぼくらの七日間戦争』の続編となる作品ですが、中学生の妊娠や死、暴力団との対峙など、なかなかハードな展開を迎えることとなります。以前に読んだ…

吉村達也『算数・国語・理科・殺人』

吉村達也 『算数・国語・理科・殺人』 講談社文庫 吉村達也の『算数・国語・理科・殺人』を読了しました。以前に祥伝社文庫で読んだことがあるのですが、プロットについてはすっかり忘れてしまっていました。今回あらためて読み返してみて、かなり無理のある…

村上春樹『雨天炎天 ギリシャ・トルコ辺境紀行』

村上春樹 『雨天炎天 ギリシャ・トルコ辺境紀行』 新潮文庫 村上春樹の『雨天炎天 ギリシャ・トルコ辺境紀行』を読了しました。かなり昔に読んだことがあるはずなのですが、ほとんど覚えていないことが今回再読してみてよく分かりました。作者のエッセイや旅…

森博嗣『幻惑の死と使途』

森博嗣 『幻惑の死と使途』 講談社文庫 森博嗣の『幻惑の死と使途』を読了しました。奇術をテーマにした作品で、シンプルながらトリッキーな謎が提示されて、それが意外な仕方で解かれる様はミステリーの王道といえると思います。ただ不思議と印象に残りづら…

吉村達也『「倫敦の霧笛」殺人事件』

吉村達也 『「倫敦の霧笛」殺人事件』 角川文庫 吉村達也の『「倫敦の霧笛」殺人事件』を読了しました。ワンナイトミステリーと銘打たれた中編小説の一作で、今回が始めての読書となります。個人的にこのワンナイトミステリーシリーズはどの作品も楽しく読む…

貴志祐介『ダークゾーン』

貴志祐介 『ダークゾーン』 祥伝社文庫 貴志祐介の『ダークゾーン』を読了しました。ひたすらゲーム小説に淫して書いたという印象の小説で、そこに向けて本作のあらゆる要素が収斂していくかのように感じられます。そのゲーム性を楽しめるかどうかが本書を面…

赤川次郎『象牙色のクローゼット』

赤川次郎 『象牙色のクローゼット』 光文社文庫 赤川次郎の『象牙色のクローゼット』を読了しました。21歳を迎えた主人公が巻き込まれるのはサイコスリラーを思わせるような殺人事件で、「青春ミステリー」を標榜しながらも作品全体としてはいつものようにど…

吉村達也『シンデレラの五重殺』

吉村達也 『シンデレラの五重殺』 光文社文庫 吉村達也の『シンデレラの五重殺』を読了しました。昔一度読んだことがあるはずなのですが、プロットもトリックもすっかり忘れてしまっていて、読み進めるうちに当時の記憶が少しずつ蘇ってきました。なかなかユ…

レイモンド・チャンドラー『大いなる眠り』

レイモンド・チャンドラー 村上春樹訳 『大いなる眠り』 ハヤカワ文庫 レイモンド・チャンドラー(1888-1959)の『大いなる眠り』を読了しました。フィリップ・マーロウを主人公とする一連のシリーズ作品の第一作にあたるのが本書なのですが、私が読むのは今…

石持浅海『月の扉』

石持浅海 『月の扉』 光文社文庫 石持浅海の『月の扉』を読了しました。奇妙な場面設定と奇妙な行動原理に基づいて行動する登場人物たち。作者の作品は読んでいて面白いことは面白いのですが、物語の細部について読後にほとんど記憶が残っていないという不思…

斉藤洋『ルドルフとイッパイアッテナ』

斉藤洋 『ルドルフとイッパイアッテナ』 講談社文庫 斉藤洋の『ルドルフとイッパイアッテナ』を読了しました。いわずと知れた児童文学の傑作が文庫本として刊行され、より多くの読者の手に取りやすい状況になったことは喜ばしいことだと思います。劇場アニメ…

我孫子武丸『8の殺人』

我孫子武丸 『8の殺人』 講談社文庫 我孫子武丸の『8の殺人』を読了しました。古きよき新本格というのも奇妙な表現ではあるのですが、刊行から30年以上が経過した現在の地点から振り返るとそのように表現したくなるような作品です。作者お得意のユーモア感覚…

吉村達也『卒業』

吉村達也 『卒業』 角川文庫 吉村達也の『卒業』を読了しました。テーマというか狙いとしては短編としてまとめた方がよいのではないかと思う内容と感じられましたが、あるいはショート・ショートでもよいのかもしれません。いずれにしても文庫本にして180ペ…

マックス・ヴェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』

マックス・ヴェーバー 大塚久雄訳 『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』 岩波文庫 マックス・ヴェーバー(1864-1920)の『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』を読了しました。最初に読み始めたときから最後まで読み終えるまでに、期間…

有栖川有栖『スウェーデン館の謎』

有栖川有栖 『スウェーデン館の謎』 講談社文庫 有栖川有栖の『スウェーデン館の謎』を読了しました。いかにも作者らしい長篇ミステリーで良くも悪くも安心して読むことができます。足跡を巡るトリックをメインに据えながら作者お得意の人物造形が光る秀作で…

吉村達也『[会社を休みましょう]殺人事件』

吉村達也 『[会社を休みましょう]殺人事件』 光文社文庫 吉村達也の『[会社を休みましょう]殺人事件』を読了しました。作者のノンシリーズ作品ですが、サラリーマンを主人公(というよりも物語の主題)に据えたミステリーで、再読ですがあらためて楽しむ…

島田荘司『上高地の切り裂きジャック』

島田荘司 『上高地の切り裂きジャック』 文春文庫 島田荘司の『上高地の切り裂きジャック』を読了しました。表題作に加えて「山手の幽霊」という中篇作品が収録されており、いずれも作者のシリーズ探偵である御手洗潔が活躍するのですが、それぞれ作中の時期…

吉村達也『ふたご』

吉村達也 『ふたご』 角川ホラー文庫 吉村達也の『ふたご』を読了しました。本書が刊行されたのは1996年なのですが、その前年には瀬名秀明氏が『パラサイト・イヴ』で日本ホラー小説大賞を受賞していて、比較してはいけないのでしょうが、どうしても激しく見…

赤川次郎『幽霊候補生』

赤川次郎 『幽霊候補生』 文春文庫 赤川次郎の『幽霊候補生』を読了しました。目次では「連作長篇推理」と謳われているのですが、主要登場人物を同じくするシリーズ短編集といったくらいの意味合いで使われている言葉なのでしょう。各作品の間に特に繋がりは…

フィッツジェラルド『グレート・ギャッツビー』

フィッツジェラルド 小川高義訳 『グレート・ギャッツビー』 光文社古典新訳文庫 スコット・フィッツジェラルド(1896-1940)の『グレート・ギャッツビー』を読了しました。最初に高校生の頃に野崎孝氏の翻訳で読んで、その後、村上春樹氏の翻訳で読み直し、…

吉村達也『三十三人目の探偵』

吉村達也 『三十三人目の探偵』 角川文庫 吉村達也の『三十三人目の探偵』を読了しました。以前にドラマ化されたこともあるらしい本書は作者の初期のノンシリーズ作品です。現代の長大なミステリー作品に慣れてしまった身からすると、文庫本にして300ページ…

有栖川有栖『ロシア紅茶の謎』

有栖川有栖 『ロシア紅茶の謎』 講談社文庫 有栖川有栖の『ロシア紅茶の謎』を読了しました。臨床犯罪学者の火村英生を主人公とするシリーズで、エラリー・クイーンにならって国名をそのタイトルに冠した作品群の第一作にあたるのが本書です。本家の国名シリ…