文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

2023-05-01から1ヶ月間の記事一覧

フリオ・リャマサーレス『黄色い雨』

フリオ・リャマサーレス 木村榮一訳 『黄色い雨』 河出文庫 フリオ・リャマサーレスの『黄色い雨』を読了しました。現代スペイン文学という私にとっては未知の領域の作品でした。 表題作で描かれたアイニェーリェ村は実際に存在するものであるという巻頭に置…

赤川次郎『瑠璃色のステンドグラス』

赤川次郎 『瑠璃色のステンドグラス』 光文社文庫 赤川次郎の『瑠璃色のステンドグラス』を読了しました。いささか多すぎる登場人物たちに何とか物語上の顛末をつけるために、終盤にはかなり目まぐるしい展開があって、ポカンとしてしまう結果となりました。…

吉村達也『踊る少女』

吉村達也 『踊る少女』 角川ホラー文庫 吉村達也の『踊る少女』を読了しました。短編集としてどれも一定水準の恐さを備えた7つの作品が収録されています。個人的には表題作となった「踊る少女」が読後も印象に残り続けています。 【満足度】★★★☆☆

貴志祐介『クリムゾンの迷宮』

貴志祐介 『クリムゾンの迷宮』 角川文庫 貴志祐介の『クリムゾンの迷宮』を読了しました。もう何年前のことになるのか数えるのもうんざりしてしまうほど昔に初めて読んだときは、どきどきしながらページをめくったことをよく覚えています。作者らしいエンタ…

我孫子武丸『0の殺人』

我孫子武丸 『0の殺人』 講談社文庫 我孫子武丸の『0の殺人』を読了しました。何となく新人作家の第二作目に相応しい作品というか、技術で描ききった推理小説という印象です。作者お得意のユーモアの面でも、私個人的には物足りなさが残ってしまうのですが…

吉村達也『金沢W坂の殺人』

吉村達也 『金沢W坂の殺人』 光文社文庫 吉村達也の『金沢W坂の殺人』を読了しました。トリッキーな設定の四重殺人と物語性とがうまく融合した推理小説で、作者の才能が遺憾なく発揮された作品です。面白く読むことができました。 【満足度】★★★☆☆

村上春樹・安西水丸『夜のくもざる』

村上春樹・安西水丸 『夜のくもざる』 新潮文庫 村上春樹・安西水丸の『夜のくもざる』を読了しました。村上春樹らしい偏見に満ちた(おそらく褒め言葉には聞こえないと思うのですが、作家の個性という意味では得がたいものなのだと思います)視点やフレーズ…

有栖川有栖『暗い宿』

有栖川有栖 『暗い宿』 角川文庫 有栖川有栖の『暗い宿』を読了しました。作者の書くミステリーはいつもの通り一定水準以上の満足度を与えてくれるものですが、本作品集では特に「ホテル・ラフレシア」の鮮烈なラストシーンが忘れがたい印象を残します。物語…

赤川次郎『三毛猫ホームズのびっくり箱』

赤川次郎 『三毛猫ホームズのびっくり箱』 角川文庫 赤川次郎の『三毛猫ホームズのびっくり箱』を読了しました。短編集として舞台設定にはバラエティがあって、それぞれのシチュエーションで事件に巻き込まれるレギュラー登場人物たちの様子を楽しむというが…

吉村達也『死者からの人生相談』

吉村達也 『死者からの人生相談』 徳間文庫 吉村達也の『死者からの人生相談』を読了しました。ラジオ局に勤めていた作者ならではのキャリアを活かした小説として面白く読むことができた反面、ミステリーとしてはまだまだ“こなれていない”印象の作品です。 …

吉村達也『御殿山の殺人』

吉村達也 『御殿山の殺人』 光文社文庫 吉村達也の『御殿山の殺人』を読了しました。『六麓荘の殺人』に続いて、高級住宅地シリーズとでもいうべき作品なのですが、ミステリーとしてはいささか物足りなさを覚えてしまいます。 【満足度】★★★☆☆

麻耶雄嵩『神様ゲーム』

麻耶雄嵩 『神様ゲーム』 講談社文庫 麻耶雄嵩の『神様ゲーム』を読了しました。「ミステリーランド」として刊行された当時に読んで度肝を抜かれた作品なのですが、再読してみた今回にあってもその驚きは色褪せないものがありました。ミステリーにおける探偵…

吉村達也『六麓荘の殺人』

吉村達也 『六麓荘の殺人』 光文社文庫 吉村達也の『六麓荘の殺人』を読了しました。このシリーズならではの大がかりなトリックをメインに据えながらも、その奇抜さという面ではやや大人しい印象の作品です。その分、ロジカルな出来栄えにはなっていると思う…

吉村達也『日本国殺人事件』

吉村達也 『日本国殺人事件』 ハルキ文庫 吉村達也の『日本国殺人事件』を読了しました。満を持して復活した探偵役たちの描写には懐かしさを覚えながらも、どこか物足りなさの残る読書となりました。何というか、中期以降の作者らしい展開の作品ではあると思…

島田荘司『寝台特急「はやぶさ」1/60秒の壁』

島田荘司 『寝台特急「はやぶさ」1/60秒の壁』 光文社文庫 島田荘司の『寝台特急「はやぶさ」1/60秒の壁』を読了しました。刑事である吉敷竹史を主人公とするシリーズ作品の第一作目にあたるのが本書で、作者が書いたいわゆる「トラベルミステリー」の最初の…

宗田理『ぼくらの大冒険』

宗田理 『ぼくらの大冒険』 角川文庫 宗田理の『ぼくらの大冒険』を読了しました。子どもの頃に読んだときは、何とも稀有壮大な展開だなと感じられたプロットですが、現在の地点から読むと(本書における事件の解決方法のご都合主義はともかくとして)、何と…

吉村達也『「北京の龍王」殺人事件』

吉村達也 『「北京の龍王」殺人事件』 角川文庫 吉村達也の『「北京の龍王」殺人事件』を読了しました。ワンナイトミステリーと題された中編作品の一作で、今回の読書で以前にも本書を読んでいたことを思い出しました。実在の将棋棋士が実名で登場する(さら…

アガサ・クリステイー『死人の鏡』

アガサ・クリステイー 小倉多加志訳 『死人の鏡』 ハヤカワ文庫 アガサ・クリステイー(1890-1976)の『死人の鏡』を読了しました。名探偵ポアロを探偵役とする四つの短編作品が収録されています。英語の原題を見るに、本書の表題作とは異なる「厩舎街の殺人…

スティーヴン・クレイン『勇気の赤い勲章』

スティーヴン・クレイン 藤井光訳 『勇気の赤い勲章』 光文社古典新訳文庫 スティーヴン・クレイン(1871-1900)の『勇気の赤い勲章』を読了しました。19世紀末の時代にあまりに短い生涯を生きたクレインの代表作で、南北戦争を題材に描かれた「戦争小説」で…

吉村達也『別れてください』

吉村達也 『別れてください』 集英社文庫 吉村達也の『別れてください』を読了しました。作者自身によって「サスペンス」として分類されている作品の一つなのですが、これまでに読んだ同ジャンルの他作品と同様に何とも不思議な読み心地の作品です。これはこ…

歌野晶午『生存者、一名』

歌野晶午 『生存者、一名』 祥伝社文庫 歌野晶午の『生存者、一名』を読了しました。再読だったのですが、ストーリーはほとんど忘れてしまっていました。孤島を舞台にしたミステリー作品でもあるのですが、リドルストリーの趣向もあって、中編作品という長さ…

レイチェル・クシュナー『終身刑の女』

レイチェル・クシュナー 池田真紀子訳 『終身刑の女』 小学館文庫 レイチェル・クシュナーの『終身刑の女』を読了しました。ブッカー賞最終候補作という触れ込みもあって手に取ることとなりましたが、どちらかというとエンターテインメント系の作品を出して…

赤川次郎『ひまつぶしの殺人』

赤川次郎 『ひまつぶしの殺人』 角川文庫 赤川次郎の『ひまつぶしの殺人』を読了しました。その奇抜な設定で、数ある作者の小説群の中でも特にユニークで人気のある作品になっているのが本書です。タイトルが単なる付け足しになっているところなど、いろいろ…

村上春樹『ねじまき鳥クロニクル』

村上春樹 『ねじまき鳥クロニクル』 新潮文庫 村上春樹の『ねじまき鳥クロニクル』を読了しました。新作長編作品を発表したばかりの作者ですが、今更のように本書を読み返しています。私が初めて読んだ作者の作品は本書で、いわゆる純文学というかメインスト…