文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

エッセイ・インタビュー

T. E. カーハート『パリ左岸のピアノ工房』

T. E. カーハート 村松潔訳 『パリ左岸のピアノ工房』 新潮社 T. E. カーハートの『パリ左岸のピアノ工房』を読了しました。本書のカバーに書かれたプロフィールによれば、作者はアイルランドとアメリカの二つの国籍を保有し、世界各地を回った後に本書の執…

村上春樹『辺境・近境』

村上春樹 『辺境・近境』 新潮文庫 村上春樹の『辺境・近境』を読了しました。アメリカのイースト・ハンプトン、瀬戸内海の無人島、メキシコ、香川県、ノモンハン、アメリカ大陸横断、そして作者が少年時代を過ごした街である神戸と、辺境と近境を巡る旅行記…

村上春樹・河合隼雄『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』

村上春樹・河合隼雄 『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』 新潮文庫 村上春樹・河合隼雄の『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』を読了しました。対談集という形式の作品なのですが、『ねじまき鳥クロニクル』の解題として興味深く読むことができるものになって…

村上春樹『ランゲルハンス島の午後』

村上春樹・安西水丸 『ランゲルハンス島の午後』 新潮文庫 村上春樹・安西水丸の『ランゲルハンス島の午後』を読了しました。いつもの村上節が炸裂する短いエッセイ集なのですが、そこに付けられた安西氏の絵が何ともいえない味わいを見せていて、今回の読書…

村上春樹・安西水丸『日出る国の工場』

村上春樹・安西水丸 『日出る国の工場』 新潮文庫 村上春樹・安西水丸の『日出る国の工場』を読了しました。工場見学をテーマにしたエッセイ集ですが、取材先の中には一般的な意味では「工場」と呼べないようなもの(結婚式場、農場など)も含まれています。…

村上春樹・大橋歩『村上ラヂオ』

村上春樹・大橋歩 『村上ラヂオ』 新潮文庫 村上春樹・大橋歩の『村上ラヂオ』を読了しました。『anan』に連載されていた作品とのことですが、いつもの村上節というか、良くも悪くも変わらない彼のエッセイを楽しむことができます。 【満足度】★★★☆☆

村上春樹『もし僕らのことばがウィスキーであったなら』

村上春樹 『もし僕らのことばがウィスキーであったなら』 新潮文庫 村上春樹の『もし僕らのことばがウィスキーであったなら』を読了しました。作者の旅行記は好きでよく読んでいたのですが、本書はまったくと言っていいほど記憶に残っておらず、今回あらため…

先崎学『うつ病九段 プロ棋士が将棋を失くした一年間』

先崎学 『うつ病九段 プロ棋士が将棋を失くした一年間』 文春文庫 先崎学の『うつ病九段 プロ棋士が将棋を失くした一年間』を読了しました。プロの将棋棋士であり、週刊誌でのエッセイ連載などその文才にも定評のある先崎九段による、自らのうつ病闘病記です…

村上春樹・安西水丸『村上朝日堂はいかにして鍛えられたか』

村上春樹・安西水丸 『村上朝日堂はいかにして鍛えられたか』 新潮文庫 村上春樹・安西水丸の『村上朝日堂はいかにして鍛えられたか』を読了しました。肩の力を抜いたかたちで書かれたエッセイということで(以前にエッセイ集を読み返してみたときにも感じた…

『疎外と叛逆 ガルシア・マルケスとバルガス・ジョサの対話』

寺尾隆吉訳 『疎外と叛逆 ガルシア・マルケスとバルガス・ジョサの対話』 水声社 『疎外と叛逆 ガルシア・マルケスとバルガス・ジョサの対話』を読了しました。本書は、20世紀のラテンアメリカ文学を代表する作家であるガルシア・マルケスとバルガス=リョサ…

村上春樹『村上朝日堂 はいほー!』

村上春樹 『村上朝日堂 はいほー!』 新潮文庫 村上春樹の『村上朝日堂 はいほー!』を読了しました。当たり前の話ではあるのですが、あらためて読み返してみると、音楽や映画の話はともかくとして、ところどころに時代性を感じます。これは裏を返してみると…

村上春樹『雨天炎天 ギリシャ・トルコ辺境紀行』

村上春樹 『雨天炎天 ギリシャ・トルコ辺境紀行』 新潮文庫 村上春樹の『雨天炎天 ギリシャ・トルコ辺境紀行』を読了しました。かなり昔に読んだことがあるはずなのですが、ほとんど覚えていないことが今回再読してみてよく分かりました。作者のエッセイや旅…

ブレイク・モリソン『あなたが最後に父親と会ったのは?』

ブレイク・モリソン 中野恵津子訳 『あなたが最後に父親と会ったのは?』 新潮社 ブレイク・モリソンの『あなたが最後に父親と会ったのは?』を読了しました。刊行当初の新潮クレスト・ブックスはエッセイやノンフィクション、あるいはアンソロジーなどもラ…

村上春樹/安西水丸『村上朝日堂』

村上春樹/安西水丸 『村上朝日堂』 新潮文庫 村上春樹/安西水丸の『村上朝日堂』を読了しました。かなり最初期のエッセイだと思うのですが、肩の力が抜けた作者の声を楽しむことができます。当時の作者の世界のものの見方を示すものとして興味深く読むこと…

平野啓一郎『死刑について』

平野啓一郎 『死刑について』 岩波書店 平野啓一郎の『死刑について』を読了しました。政治的な発言をためらうことなく続けている作者ですが、自身のかつての死刑存置派という立場から、死刑廃止論者へと至るきっかけとなった(緩やかで複数の)体験が、本書…

村上春樹『やがて哀しき外国語』

村上春樹 『やがて哀しき外国語』 講談社文庫 村上春樹の『やがて哀しき外国語』を読了しました。「村上朝日堂」などの完全にお気楽なテンションで書かれたエッセイとはやや趣が異なる作品で、1991年から約2年半の間にわたって作者が滞在したアメリカはプリ…

村上春樹『村上朝日堂ジャーナル うずまき猫のみつけかた』

村上春樹 『村上朝日堂ジャーナル うずまき猫のみつけかた』 新潮文庫 村上春樹の『村上朝日堂ジャーナル うずまき猫のみつけかた』を読了しました。「村上朝日堂」のタイトルを冠したエッセイシリーズ(?)で、最初に刊行されたのは1996年だったようです。…

有栖川有栖『論理仕掛けの奇談 有栖川有栖解説集』

有栖川有栖 『論理仕掛けの奇談 有栖川有栖解説集』 角川文庫 有栖川有栖の『論理仕掛けの奇談 有栖川有栖解説集』を読了しました。作者が他の作家のミステリ作品に寄せた解説を一冊の本にまとめたものが本書で、そのいくつかの文章は以前に読んだことがあっ…

大江健三郎 文/大江ゆかり 画『ゆるやかな絆』

大江健三郎 文/大江ゆかり 画 『ゆるやかな絆』 講談社文庫 大江健三郎の『ゆるやかな絆』を読了しました。エッセイ集『恢復する家族』の続編とでもいうべき作品で、原著は1996年に刊行されています。1994年のノーベル文学賞受賞の時期についての回想をはじ…

大江健三郎 文/大江ゆかり 画『恢復する家族』

大江健三郎 文/大江ゆかり 画 『恢復する家族』 講談社文庫 大江健三郎の『恢復する家族』を読了しました。障害を持って生まれてきた長男との共生の歩みを手掛かりとして、傷と癒しについての思索を深めていく作家と家族の様子を綴った長篇エッセイです。と…

村上春樹・安西水丸『村上朝日堂の逆襲』

村上春樹・安西水丸 『村上朝日堂の逆襲』 新潮文庫 1985年から1986年にかけて「週間朝日」で連載されたエッセイ集。連載期間は長編作品でいえば『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』と『ノルウェイの森』が発表される間の期間に当たります。安…

G・ガルシア=マルケス『ぼくはスピーチをするために来たのではありません』

G・ガルシア=マルケス 木村榮一訳 『ぼくはスピーチをするために来たのではありません』 新潮社 G・ガルシア=マルケス(1928-2014)の『ぼくはスピーチをするために来たのではありません』を読了しました。本書には「スピーチ嫌い」とされるガルシア=マルケ…

大江健三郎『大江健三郎往復書簡 暴力に逆らって書く』

大江健三郎 『大江健三郎往復書簡 暴力に逆らって書く』 朝日文庫 『大江健三郎往復書簡 暴力に逆らって書く』を読了しました。本書は大江健三郎と同時代の知識人との間で交わされた往復書簡を収録したもので、その相手はギュンター・グラス、ナディン・ゴー…

大江健三郎『「自分の木」の下で』

大江健三郎 『「自分の木」の下で』 朝日文庫 大江健三郎の『「自分の木」の下で』を読了しました。1999年から2000年にかけてのベルリン自由大学で講義を行っていた時代に、現地の日本人学校で子どもたちに話して聞かせたという文章が基になったという「なぜ…

『大江健三郎 作家自身を語る』

大江健三郎 聞き手・構成 尾崎真理子 『大江健三郎 作家自身を語る』 新潮文庫 『大江健三郎 作家自身を語る』を読了しました。2000年代に行われたロングインタビューのまとめに、東日本大震災を経た後に行われたインタビューを加えた増補版です。デビュー前…

村上春樹『猫を棄てる 父親について語るとき』

村上春樹 『猫を棄てる 父親について語るとき』 文藝春秋 村上春樹の『猫を棄てる 父親について語るとき』を読了しました。これまでほとんど家族について語ることがなかった村上氏が父親の死を契機として、書き記しておかなければならないという思いから書き…

大江健三郎・古井由吉『文学の淵を渡る』

大江健三郎・古井由吉 『文学の淵を渡る』 新潮文庫 大江健三郎と古井由吉の対談集『文学の淵を渡る』を読了しました。戦後日本を代表する作家である大江健三郎と古井由吉との間で行われた、古くは1993年、最近のものでは2015年の対談を収録したのが本書です…

村上春樹『村上さんのところ』

村上春樹 絵:フジモトマサル 『村上さんのところ』 新潮文庫 村上春樹の『村上さんのところ』を読了しました。期間限定の特設ウェブサイトを通じて一般の人から送られてきた37,465通のメールをすべて読み、それに対して行った3,716通の回答の中から473通を…