文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

哲学

マルティン・ハイデッガー『存在と時間』

マルティン・ハイデッガー 細谷貞雄訳 『存在と時間』 ちくま学芸文庫 マルティン・ハイデッガー(1889-1976)の『存在と時間』を読了しました。いわずと知れた20世紀における哲学上の主要著作のひとつですが、21世紀の現在においてはどのような評価になって…

渡辺公三『現代思想の冒険者たち 第20巻 レヴィ=ストロース―構造』

渡辺公三 『現代思想の冒険者たち 第20巻 レヴィ=ストロース―構造』 講談社 渡辺公三の『現代思想の冒険者たち 第20巻 レヴィ=ストロース―構造』を読了しました。このシリーズは哲学に対する私の興味関心を駆り立ててくれた思い出のある叢書なのですが、本巻…

トーマス・クーン『コペルニクス革命』

トーマス・クーン 常石敬一訳 『コペルニクス革命』 講談社学術文庫 トーマス・クーン(1922-1996)の『コペルニクス革命』を読了しました。『科学革命の構造』を著して科学哲学の世界に喧々囂々の議論を巻き起こす前の「科学史家」クーンの著作です。本書に…

野家啓一『現代思想の冒険者たち 第24巻 クーン―パラダイム』

野家啓一 『現代思想の冒険者たち 第24巻 クーン―パラダイム』 講談社 野家啓一の『現代思想の冒険者たち 第24巻 クーン―パラダイム』を読了しました。「通約不可能性」に関する擁護を中心に読み込んで、その点に関する自分の理解を今一度補強したいというの…

カント『実践理性批判』

カント 波多野精一・宮本和吉・篠田英雄訳 『実践理性批判』 岩波文庫 カント(1724-1804)の『実践理性批判』を読了しました。『純粋理性批判』が「第一批判」と呼ばれるのに対して本書は「第二批判」と呼ばれ、人間理性の批判的吟味が遂行されます。第一批…

ジョン・ロック『寛容についての手紙』

ジョン・ロック 加藤節・李静和訳 『寛容についての手紙』 岩波文庫 ジョン・ロック(1632-1704)の『寛容についての手紙』を読了しました。「寛容」という言葉でイメージされるのは極めて現代的で普遍的なテーマなのですが、本書でロックが問題とするのは、…

内山勝利 責任編集『哲学の歴史 第1巻 哲学誕生【古代Ⅰ】』

内山勝利 責任編集 『哲学の歴史 第1巻 哲学誕生【古代Ⅰ】』 中央公論新社 『哲学の歴史 第1巻 哲学誕生【古代Ⅰ】』を読了しました。帯のコピーである「最初からクライマックス!」に思わずクスリとさせられますが、本書では古代ギリシアのいわゆる「ソクラ…

N・マルコム『ウィトゲンシュタイン 天才哲学者の思い出』 

N・マルコム 板坂元訳 『ウィトゲンシュタイン 天才哲学者の思い出』 講談社現代新書 N・マルコムの『ウィトゲンシュタイン 天才哲学者の思い出』を読了しました。本書はアメリカの哲学者であり、ケンブリッジ時代のウィトゲンシュタインに学び、「天才哲…

スティーヴン・マンフォード ラニ・リル・アンユム『哲学がわかる 因果性』

スティーヴン・マンフォード ラニ・リル・アンユム 塩野直之 谷川卓 訳 『哲学がわかる 因果性』 岩波書店 スティーヴン・マンフォードとラニ・リル・アンユムの『哲学がわかる 因果性』を読了しました。サブタイトルに“A VERY SHORT INTRODUCTION”とあるよ…

伊藤邦武『宇宙はなぜ哲学の問題になるのか』

伊藤邦武 『宇宙はなぜ哲学の問題になるのか』 ちくまプリマー新書 伊藤邦武の『宇宙はなぜ哲学の問題になるのか』を読了しました。筑摩書房には「ちくま新書」レーベルがありますが、この「ちくまプリマー新書」はヤングアダルト向けのコンパクトな入門書が…

サイモン・ブラックバーン『ビーイング・グッド 倫理学入門』

サイモン・ブラックバーン 坂本知宏・村上毅訳 『ビーイング・グッド 倫理学入門』 晃洋書房 サイモン・ブラックバーン(1944-)の『ビーイング・グッド 倫理学入門』を読了しました。邦題が指し示すとおり、本書は倫理学の入門書で、原著の出版は2001年のこ…

ジョセフ・K・キャンベル『自由意志』

ジョセフ・K・キャンベル 高崎将平訳 『自由意志』 岩波書店 ジョセフ・K・キャンベルの『自由意志』を読了しました。「現代哲学のキーコンセプト」として出版された哲学教科書シリーズの一冊です(どちらかというと、新しい現代の「形而上学」の教科書を意…

山口義久『アリストテレス入門』

山口義久 『アリストテレス入門』 ちくま新書 山口義久の『アリストテレス入門』を読了しました。「万学の祖」とも呼ばれるアリストテレスの広範な思想を、200ページ程度の新書のかたちにまとめるというそもそもの企画からして無理があったのではないかと感…

チェイス・レン『現代哲学のキーコンセプト 真理』

チェイス・レン 野上志学訳 『現代哲学のキーコンセプト 真理』 岩波書店 チェイス・レンの『現代哲学のキーコンセプト 真理』を読了しました。「真理」をめぐる現代哲学の様々な立場と論争をコンパクトにまとめた教科書的な書物です。著者は本書において、…

藤沢令夫『プラトンの哲学』

藤沢令夫 『プラトンの哲学』 岩波新書 藤沢令夫の『プラトンの哲学』を読了しました。西洋哲学の源流に位置するプラトンの思想を丁寧に読み解き、解説してくれる入門書。200ページと少しばかりのこの薄い書物の中にどれだけの情報量が詰まっているのかと思…

氷上英廣『ニーチェの顔 他十三篇』

氷上英廣著 三島憲一編 『ニーチェの顔 他十三篇』 岩波文庫 氷上英廣(1911-1986)の『ニーチェの顔 他十三篇』を読了しました。高校時代に読んだ『ツァラトゥストラ』は岩波文庫版で氷上氏の翻訳。訳者による解説を読んで、ニーチェの謎めいた箴言や錯綜す…

ミシェル・ウエルベック『ショーペンハウアーとともに』

ミシェル・ウエルベック 澤田直訳 『ショーペンハウアーとともに』 国書刊行会 ミシェル・ウエルベックの『ショーペンハウアーとともに』を読了しました。現代フランスを代表する作家のひとりであるミシェル・ウエルベックが、20代のときに出会って決定的な…

冨田恭彦『観念論の教室』

冨田恭彦 『観念論の教室』 ちくま新書 冨田恭彦の『観念論の教室』を読了しました。本書の主題となっているのは、ジョージ・バークリーの観念論(彼自身の言い方を使えば「物質否定論」)なのですが、「観念」という言葉のルーツを古代ギリシアの原子論、そ…

ジル=ガストン・グランジェ『科学の本質と多様性』

ジル=ガストン・グランジェ 松田克進・三宅岳史・中村大介訳 『科学の本質と多様性』 文庫クセジュ ジル=ガストン・グランジェ(1920-)の『科学の本質と多様性』を読了しました。「私は何を知るか?」を意味するフランス語の名前が冠せられた、文庫クセジュ…

W・V・O・クワイン『論理的観点から 論理と哲学をめぐる九章』

W・V・O・クワイン 飯田隆訳 『論理的観点から 論理と哲学をめぐる九章』 勁草書房 W・V・O・クワイン(1908-2000)の『論理的観点から 論理と哲学をめぐる九章』を読了しました。本書には、これを読んでいないと「モグリ」の哲学研究者と言われてしまうとい…

内井惣七『シャーロック・ホームズの推理学』

内井惣七 『シャーロック・ホームズの推理学』 講談社現代新書 内井惣七の『シャーロック・ホームズの推理学』を読了しました。シャーロック・ホームズは狭い意味での“logician”だったということを、ホームズの台詞や行動と19世紀の科学方法論とを比較するか…

坂本百大編『現代哲学基本論文集Ⅱ』

坂本百大編 『現代哲学基本論文集Ⅱ』 勁草書房 坂本百大編『現代哲学基本論文集Ⅱ』を読了しました。本書の収録作品は以下の通りです。 ジョージ・E・ムーア『観念論論駁』 アルフレッド・タルスキ『真理の意味論的観点と意味論の基礎』 ウィラード・V・O・ク…

冨田恭彦『クワインと現代アメリカ哲学』

冨田恭彦 『クワインと現代アメリカ哲学』 世界思想社 冨田恭彦の『クワインと現代アメリカ哲学』を読了しました。1994年に出版されている本書ですが、内容的には四半世紀を過ぎても古びることなく、クワイン哲学の良い入門書になっていると思います。とりわ…

飯田隆『言語哲学大全Ⅳ 真理と意味』

飯田隆 『言語哲学大全Ⅳ 真理と意味』 勁草書房 飯田隆の『言語哲学大全Ⅳ 真理と意味』を読了しました。全四巻をなす『言語哲学大全』の完結巻となります。本書の主題はデイヴィドソンのプログラムを継承するかたちで、自然言語である日本語(の一部)に意味…

マイケル・ポランニー『暗黙知の次元』

マイケル・ポランニー 高橋勇夫訳 『暗黙知の次元』 ちくま学芸文庫 マイケル・ポランニー(1891-1976)の『暗黙知の次元』を読了しました。ハンガリー生まれの医学者であり科学哲学者であるポランニーが、明示的な知識(たとえば「Sはpである」と命題化する…

G・ライル『心の概念』

G・ライル 坂本百大・井上治子・服部裕幸訳 『心の概念』 みすず書房 G・ライル(1900-1976)の『心の概念』を読了しました。ライルがデカルトの神話と呼ぶ「機械の中の幽霊」やカテゴリーミステイクの議論によって、哲学史上あまりにも有名な本書ですが、ま…

アドルノ『認識論のメタクリティーク』

アドルノ 古賀徹・細見和之訳 『認識論のメタクリティーク』 法政大学出版局 アドルノ(1903-1969)の『認識論のメタクリティーク』を読了しました。啓蒙主義を批判するフランクフルト学派の中心人物であるアドルノによるフッサール哲学の批判の書です。「フ…

パスカル『パンセ』

パスカル 塩川徹也訳 『パンセ』 岩波文庫 パスカル(1623-1662)の『パンセ』を読了しました。以前に私が『パンセ』を読んだのは中公文庫の訳で、たしかブランシュヴィック版をもとにした翻訳だったと思います。未完の著作というよりは後世の人間が集積した…

児玉聡『功利主義入門―はじめての倫理学』

児玉聡 『功利主義入門―はじめての倫理学』 ちくま新書 児玉聡の『功利主義入門―はじめての倫理学』を読了しました。功利主義を主軸に据えた倫理学の入門書です。功利主義への偏見に満ちた非難は一種のわら人形攻撃であるとして、著者はバランスの取れた功利…

德永恂『現代思想の断層―「神なき時代」の模索』

德永恂 『現代思想の断層―「神なき時代」の模索』 岩波新書 德永恂の『現代思想の断層―「神なき時代」の模索』を読了しました。閉店してしまう近所の本屋でセール販売されていたのを手に取ったのが、本書購入のきっかけです。岩波書店の本はこういうときに、…