文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

日本文学

吉村達也『夫の妹』

吉村達也 『夫の妹』 集英社文庫 吉村達也の『夫の妹』を読了しました。作者の意図するところは分かるような気もするのですが、時間をかけて読むべき作品かといわれると少し首をかしげてしまうところもあります。作者の作品については惰性で読み続けている状…

吉村達也『お見合い』

吉村達也 『お見合い』 角川ホラー文庫 吉村達也の『お見合い』を読了しました。主人公の語り口などに時代の工夫が見られるような気がします。本筋とは外したところに真相のポイントを持ってくるあたりは、本格ミステリーの要素を持つ作品であると言えないこ…

筒井康隆『48億の妄想 マグロマル』

筒井康隆 『48億の妄想 マグロマル』 新潮社 筒井康隆の『48億の妄想 マグロマル』を読了しました。新潮社から刊行された筒井康隆全集の第二巻です。表題にも掲げられている長編作品「48億の妄想」を読むのはこれが初めてでしたが、テレビという存在を通した…

宗田理『ぼくらの七日間戦争』

宗田理 『ぼくらの七日間戦争』 角川文庫 宗田理の『ぼくらの七日間戦争』を読了しました。映画化もされたジュブナイル作品の傑作ですが、現代の若い子どもたちにも本書は読まれているのでしょうか。才気を感じさせる描写といささかステレオタイプにも思える…

島田荘司『夏、19歳の肖像』

島田荘司 『夏、19歳の肖像』 文春文庫 島田荘司の『夏、19歳の肖像』を読了しました。サスペンスに満ちた前半の展開から、瑞々しい青春小説のタッチを経て、後半は作者お得意のロマンティシズムに満ちたクライマックスへと流れ込んでいく物語で、作者の小説…

森博嗣『封印再度』

森博嗣 『封印再度』 講談社文庫 森博嗣の『封印再度』を読了しました。かつてこのシリーズを読んでいた時期も、この作品を読む頃から何となく惰性で読んでいたような記憶があるのですが、このたび読み返してみても少し退屈さの方が前に出てくる読書体験とな…

歌野晶午『さらわれたい女』

歌野晶午 『さらわれたい女』 角川文庫 歌野晶午の『さらわれたい女』を読了しました。本書の解説で法月綸太郎氏が「言いかえれば本書は、歌野氏が島田荘司氏の引力圏内から離脱して、岡嶋二人的な作風へシフトしていく最初の試みだったことになるけれど」と…

村上春樹『蛍・納屋を焼く・その他の短編』

村上春樹 『蛍・納屋を焼く・その他の短編』 新潮文庫 村上春樹の『蛍・納屋を焼く・その他の短編』を読了しました。本書の冒頭に置かれた短編作品「蛍」ですが、この作品の一部は『ノルウェイの森』に引き継がれて長編作品として展開されていたように記憶し…

吉村達也『トリック狂殺人事件』

吉村達也 『トリック狂殺人事件』 角川文庫 吉村達也の『トリック狂殺人事件』を読了しました。昔に私が初めて読んだ吉村氏の作品は本書だったと記憶しているのですが、久し振りに読み返してみても読後の印象は良くも悪くもあまり変わりませんでした。伏線の…

赤川次郎『三毛猫ホームズの恐怖館』

赤川次郎 『三毛猫ホームズの恐怖館』 角川文庫 赤川次郎の『三毛猫ホームズの恐怖館』を読了しました。登場人物の多さに読んでいていささか混乱させられるところがあるのですが、いろいろと新奇な企みが見て取れる作品になっていると思います。 【満足度】★…

貴志祐介『黒い家』

貴志祐介 『黒い家』 角川ホラー文庫 貴志祐介の『黒い家』を読了しました。数々のベストセラー作家を生み出した日本ホラー小説大賞の第四回大賞受賞作品で、言わずとしれた日本のホラー小説作品の傑作のひとつです。生命保険を主題に据えることで、メインと…

吉村達也『南太平洋殺人事件』

吉村達也 『南太平洋殺人事件』 角川文庫 吉村達也の『南太平洋殺人事件』を読了しました。かなり昔に読んだ記憶では、南太平洋のリゾートホテルを舞台に展開されるミステリーだったはずなのですが、物語のメインとなる事件は八丈島で起きています。その他に…

吉村達也『逆密室殺人事件』

吉村達也 『逆密室殺人事件』 角川文庫 吉村達也の『逆密室殺人事件』を読了しました。主人公のキャラクターは良くも悪くも印象深いのですが、本書においてはそれがどうも悪い方に働いてしまっているような気もします。主人公の上司の人物造形についても、現…

吉村達也『旧軽井沢R邸の殺人』

吉村達也 『旧軽井沢R邸の殺人』 光文社文庫 吉村達也の『旧軽井沢R邸の殺人』を読了しました。面白いトリックの仕掛けられたミステリー作品なのですが、再読してみてもなぜだか自分の中で印象に残らない作品になってしまっています。プロットも練られてい…

高田崇史『QED 百人一首の呪』

高田崇史 『QED 百人一首の呪』 講談社文庫 高田崇史の『QED 百人一首の呪』を読了しました。メフィスト賞受賞作ということで、ミステリー作品としては一定の捻りが加わったものであることが予想されるのですが、まさに百人一首に仕掛けられた「謎」の解明の…

吉村達也『ケータイ』

吉村達也 『ケータイ』 角川ホラー文庫 吉村達也の『ケータイ』を読了しました。王道ホラー作品という体裁のプロットで終盤における盛り上がりも十分に計算されていて、吉村達也のミステリー作品を期待して読む読者の期待に応えてくれるものになっていると思…

吉村達也『iレディ』

吉村達也 『iレディ』 角川ホラー文庫 吉村達也の『iレディ』を読了しました。設定としてはやや古めかしさが感じられてしまうのですが、単なるホラー作品ではないものを描こうとする作者の意図を感じます(作者自身にはそのような企図はないのかもしれません…

島田荘司『星籠の海』

島田荘司 『星籠の海』 講談社文庫 島田荘司の『星籠の海』を読了しました。読者の期待度を上回る作品かと言われると、どうしてもそうだと言うことはできないのですが、作者らしい企みに満ちた長編作品になっています。2023年の現在の地点から見ると示唆的に…

森博嗣『詩的私的ジャック』

森博嗣 『詩的私的ジャック』 講談社文庫 森博嗣の『詩的私的ジャック』を読了しました。以前に読んだときはキャラクター小説としての展開やサスペンスの方に関心の重点があったような記憶があるのですが、今回読み返してみるとミステリーとしての作り方に捻…

我孫子武丸『狩人は都を駆ける』

我孫子武丸 『狩人は都を駆ける』 文春文庫 我孫子武丸の『狩人は都を駆ける』を読了しました。動物嫌いでありながら、決まって動物絡みの相談が寄せられる私立探偵が京都の街を舞台に活躍する姿を描いた作品集です。全体的にはユーモラスな筆致で描かれてい…

吉村達也『危険なふたり』

吉村達也 『危険なふたり』 集英社文庫 吉村達也の『危険なふたり』を読了しました。作者自身による分類では「心理サスペンス」という範疇に入る作品なのですが、これまた何とも不思議な読み心地の作品でした。面白かったかといわれると微妙なところで、どの…

吉村達也『「香港の魔宮」殺人事件』

吉村達也 『「香港の魔宮」殺人事件』 角川文庫 吉村達也の『「香港の魔宮」殺人事件』を読了しました。「ワンナイトミステリー」と題された中編小説(少し長めの短編小説)です。キャッシュカードの悪用というワンテーマをうまく作品の中に組み込んでいて、…

吉村達也『先生』

吉村達也 『先生』 角川ホラー文庫 吉村達也の『先生』を読了しました。貴志祐介氏が『悪の教典』で極限的に描いたテーマを、吉村氏がそれよりもずっと以前にこのようなかたちで描いていたのだと思うとそれはそれで面白いのですが、作品の出来栄えとしては、…

宮部みゆき『魔術はささやく』

宮部みゆき 『魔術はささやく』 新潮文庫 宮部みゆきの『魔術はささやく』を読了しました。折に触れて読み返したくなる作品なのですが、読むたびにその面白さが減じられることのない私にとっては稀有な作品です。 【満足度】★★★★☆

貴志祐介『十三番目の人格 ISOLA』

貴志祐介 『十三番目の人格 ISOLA』 角川文庫 貴志祐介の『十三番目の人格 ISOLA』を読了しました。寡作で知られる作者の初期作品ですが、エンターテインメントとしてプロットが周到に練られていて、再読であるにもかかわらず、飽きることなく最後まで読み進…

吉村達也『銀河鉄道の惨劇』

吉村達也 『銀河鉄道の惨劇』 徳間文庫 吉村達也の『銀河鉄道の惨劇』を読了しました。作者自身が公言するように、ミステリーの創作方法自体が転換を迎えていた頃の作品で、いろいろな試行錯誤というか、分断のようなものが見て取れる作品になっていると思い…

森博嗣『笑わない数学者』

森博嗣 『笑わない数学者』 講談社文庫 森博嗣の『笑わない数学者』を読了しました。以前に読んだことがある作品なのですが、どこかぼんやりとした印象しか残っておらず、今回読み返してみてもその印象が大きく変わることはありませんでした。それがなぜなの…

赤川次郎『三毛猫ホームズの運動会』

赤川次郎 『三毛猫ホームズの運動会』 角川文庫 赤川次郎の『三毛猫ホームズの運動会』を読了しました。「三毛猫ホームズ」シリーズ初の短編集ということで出版社側も力が入っていたのか、収録作品数も多くボリューム満点の作品集となっています。短編らしい…

島田荘司『改定完全版 火刑都市』

島田荘司 『改定完全版 火刑都市』 講談社文庫 島田荘司の『改定完全版 火刑都市』を読了しました。随分と昔に読んだことのある作品で、内容はまったくといっていいほど覚えていなかったのですが、楽しく読むことができました。作者らしい大きな幻想が作品の…

吉村達也『「カリブの海賊」殺人事件』

吉村達也 『「カリブの海賊」殺人事件』 角川文庫 吉村達也の『「カリブの海賊」殺人事件』を読了しました。ワントリックをメインに据えた作者らしい「ワンナイトミステリー」に仕上がっていると思います。あまり大きな声では言えませんが、トリック自体は本…