文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

西浦博・川端裕人『理論疫学者・西浦博の挑戦 新型コロナからいのちを守れ!』

西浦博・川端裕人 『理論疫学者・西浦博の挑戦 新型コロナからいのちを守れ!』 中央公論新社 西浦博・川端裕人の『理論疫学者・西浦博の挑戦 新型コロナからいのちを守れ!』を読了しました。新型コロナウイルスの蔓延に対応するための厚生労働省クラスター…

ジャック・リッチー『クライム・マシン』

ジャック・リッチー 好野理恵訳 『クライム・マシン』 河出文庫 ジャック・リッチー(1922-1983)の『クライム・マシン』を読了しました。短篇ミステリの名手という呼び名に違わない優れた短篇ミステリーが多数収録された作品集です。巻頭に掲げられた表題作…

ジェイン・オーステイン『高慢と偏見』

ジェイン・オーステイン 中野康司訳 『高慢と偏見』 ちくま文庫 ジェイン・オーステイン(1775-1817)の『高慢と偏見』を読了しました。以前に岩波文庫の翻訳で読んだのは学生時代のことなので、今回はかなり久し振りの読み直しととなりました。本書は近代イ…

赤川次郎『うぐいす色の旅行鞄』

赤川次郎 『うぐいす色の旅行鞄』 光文社文庫 赤川次郎の『うぐいす色の旅行鞄』を読了しました。タイトルにも掲げられたアイテムを巡る思わせ振りな導入は、肩透かし以外の何ものでもありませんが、本シリーズ作品のいつもの水準どおりといったところでしょ…

清涼院流水『パーフェクト・ワールド What a perfect world! Book.12』

清涼院流水 『パーフェクト・ワールド What a perfect world! Book.12』 講談社 清涼院流水の『パーフェクト・ワールド What a perfect world! Book.12』を読了しました。僕と世界の物語と英語と京都を巡る不思議な小説(大説?)も、本巻でついにフィナーレ…

清涼院流水『パーフェクト・ワールド What a perfect world! Book.11』

清涼院流水 『パーフェクト・ワールド What a perfect world! Book.11』 講談社 清涼院流水の『パーフェクト・ワールド What a perfect world! Book.11』を読了しました。奇妙な数当てゲームの中に、パズラーたろうとする矜持のようなものが垣間見える気がし…

清涼院流水『パーフェクト・ワールド What a perfect world! Book.10』

清涼院流水 『パーフェクト・ワールド What a perfect world! Book.10』 講談社 清涼院流水の『パーフェクト・ワールド What a perfect world! Book.10』を読了しました。フィナーレへ向けての助走といった物語が展開されますが、この先には予定調和が待ち受…

清涼院流水『パーフェクト・ワールド What a perfect world! Book.9』

清涼院流水 『パーフェクト・ワールド What a perfect world! Book.9』 講談社 清涼院流水の『パーフェクト・ワールド What a perfect world! Book.9』を読了しました。本巻については、もはや英単語の羅列に過ぎないのではないかという気もするのですが、最…

ウラジーミル・ナボコフ『ナボコフ全短篇』

ウラジーミル・ナボコフ 秋草俊一郎・諫早勇一・貝澤哉・加藤光也・杉本一直・沼野充義・毛利公美・若島正 訳 『ナボコフ全短篇』 作品社 ウラジーミル・ナボコフ(1899-1977)の『ナボコフ全短篇』を読了しました。生前に発表された作品、また死後に公刊さ…

赤川次郎『三毛猫ホームズと愛の花束』

赤川次郎 『三毛猫ホームズと愛の花束』 角川文庫 赤川次郎の『三毛猫ホームズと愛の花束』を読了しました。四編の作品が収録されたシリーズ短編集です。安定の展開と安定のクオリティというか、それ以上に語るべきものがない作品でもあります。 【満足度】★…

吉村達也『「横濱の風」殺人事件』

吉村達也 『「横濱の風」殺人事件』 徳間文庫 吉村達也の『「横濱の風」殺人事件』を読了しました。中学生の少年が主人公である朝比奈耕作と対峙するという物語の展開は非常に新鮮で面白く読むことができました。本格ミステリーとしての面白さは正直なところ…

関田涙『蜜の森の凍える女神』

関田涙 『蜜の森の凍える女神』 講談社ノベルス 関田涙の『蜜の森の凍える女神』を読了しました。講談社のメフィスト賞を受賞したミステリー小説で、新本格ミステリーの作法に則った秀作です。そのトレース具合に対して好感を持つ部分もあり、一方で少し鼻白…

島田荘司『消える「水晶特急」』

島田荘司 『消える「水晶特急」』 光文社文庫 島田荘司の『消える「水晶特急」』を読了しました。作者らしい大胆なトリックを駆使したミステリー作品で、読者を楽しませるだけの一定の水準に仕上げる力はさすがだなと思わされます。 【満足度】★★★☆☆

吉村達也『空中庭園殺人事件』

吉村達也 『空中庭園殺人事件』 光文社文庫 吉村達也の『空中庭園殺人事件』を読了しました。プロットにマンネリ化を防ぐための作者の工夫が見られます。ミステリーとして面白いかといわれると、純粋に首肯できないものがあるのですが。 【満足度】★★☆☆☆

吉村達也『「巨人―阪神」殺人事件』

吉村達也 『「巨人―阪神」殺人事件』 光文社文庫 吉村達也の『「巨人―阪神」殺人事件』を読了しました。ミステリーとして完成度の高い作者の作品を読むのは何だか久し振りのような気がするのですが、タイトルにも込められている本書のメタ的な設定がミステリ…

清涼院流水『パーフェクト・ワールド What a perfect world! Book.8』

清涼院流水 『パーフェクト・ワールド What a perfect world! Book.8』 講談社 清涼院流水の『パーフェクト・ワールド What a perfect world! Book.8』を読了しました。とんでもない設定のデスゲームに幼い心がくすぐられてしまうのですが、その馬鹿馬鹿しさ…

清涼院流水『パーフェクト・ワールド What a perfect world! Book.7』

清涼院流水 『パーフェクト・ワールド What a perfect world! Book.7』 講談社 清涼院流水の『パーフェクト・ワールド What a perfect world! Book.7』を読了しました。ちょっと話のノリについていけない部分も出てきているのですが、ある意味でよく計算され…

森博嗣『月は幽咽のデバイス』

森博嗣 『月は幽咽のデバイス』 講談社文庫 森博嗣の『月は幽咽のデバイス』を読了しました。特に語るべき言葉が出てこない作品というか、これはシリーズ全体をひとつの大河小説とみなしたときの、一つの章として読まれるべきものなのかもしれません。 【満…

村上春樹『東京奇譚集』

村上春樹 『東京奇譚集』 新潮文庫 村上春樹の『東京奇譚集』を読了しました。長篇『海辺のカフカ』から『1Q84』に至るまでの期間に発表されたもので、五編の短編作品が収録された作品集です。書き下ろし作品である「品川猿」を除く四編の小説は、本作に収録…

吉村達也『「吉野の花」殺人事件』

吉村達也 『「吉野の花」殺人事件』 徳間文庫 吉村達也の『「吉野の花」殺人事件』を読了しました。かなり大部の小説ですが、この頃の作者の作品群と同様に、本格ミステリーとしてのトリックやプロットよりも、別のところに主眼を置いた作品となっていて、そ…

ル・クレジオ『嵐』

ル・クレジオ 中地義和訳 『嵐』 作品社 ル・クレジオ(1940-)の『嵐』を読了しました。表題作ともなっている「嵐」と「わたしは誰?」という邦題の付された二篇の中編小説が収録されています。前者は作者が深い関心を寄せる国である韓国南部の小島を舞台に…

シェイクスピア『ヴェニスの商人』

シェイクスピア 福田恆存訳 『ヴェニスの商人』 新潮文庫 シェイクスピア(1564-1616)の『ヴェニスの商人』を読了しました。岩波文庫、白水Uブックス、ちくま文庫のそれぞれの訳で読んだ作品で、言わずと知れた喜劇の傑作なのですが、今回の読書で印象に残…

早坂吝『アリス・ザ・ワンダーキラー 少女探偵殺人事件』

早坂吝 『アリス・ザ・ワンダーキラー 少女探偵殺人事件』 光文社文庫 早坂吝の『アリス・ザ・ワンダーキラー 少女探偵殺人事件』を読了しました。ルイス・キャロルの不思議の国のアリスをモチーフにしたパズルに、作者らしい企みが織り込まれたミステリー作…

須藤古都離『ゴリラ裁判の日』

須藤古都離 『ゴリラ裁判の日』 講談社 須藤古都離の『ゴリラ裁判の日』を読了しました。第64回メフィスト賞受賞作ですが、新本格ミステリーの文脈で読むといささか肩透かしを食ってしまうと思います。よく下調べの効いたゴリラの描写に加えて、裁判の判決を…

京極夏彦『姑獲鳥の夏』

京極夏彦 『姑獲鳥の夏』 講談社文庫 京極夏彦の『姑獲鳥の夏』を読了しました。ミステリーとしてというよりは、その設定やキャラクターにおいて人気が出た作品なのだと思うのですが、ミステリーの文脈ではなかなかに大胆なことが試みられていて、何とも複雑…

デイヴィッド・マークソン『ウィトゲンシュタインの愛人』

デイヴィッド・マークソン 木原善彦訳 『ウィトゲンシュタインの愛人』 国書刊行会 デイヴィッド・マークソン(1927-2010)の『ウィトゲンシュタインの愛人』を読了しました。本書の帯にある「煽り文」には〈アメリカ実験小説の最高到達点〉と書かれていて、…

シェイクスピア『ハムレット』

シェイクスピア 福田恆存訳 『ハムレット』 新潮文庫 シェイクスピア(1564-1616)の『ハムレット』を読了しました。今回は新潮文庫の福田恆存氏の訳での再読となります。主人公であるハムレットの言動のいかにも謎めいた部分というか、どうにも解釈しきれな…

石持浅海『賛美せよ、と成功は言った』

石持浅海 『賛美せよ、と成功は言った』 祥伝社文庫 石持浅海の『賛美せよ、と成功は言った』を読了しました。不思議な感覚のもとで展開されていく倒叙小説で、シリーズ作品に馴染みのある読者にとっては、いつものように面白く読むことができる作品になって…

マイクル・コナリー『潔白の法則』

マイクル・コナリー 古沢嘉通訳 『潔白の法則』 講談社文庫 マイクル・コナリーの『潔白の法則』を読了しました。「リンカーン弁護士」ミッキー・ハラーを主人公に据えた作品の第六弾です。主人公が陥っている窮地とタイトルに込められた矜持と、そしてそれ…

赤川次郎『霧の夜にご用心』

赤川次郎 『霧の夜にご用心』 角川文庫 赤川次郎の『霧の夜にご用心』を読了しました。主人公の人物造形に何ともいえない危うさが残る作品で、作者の力技によってかろうじて成立しているといった印象です。 【満足度】★★★☆☆