文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

モンテーニュ『エセー』

モンテーニュ 原二郎訳 『エセー』 岩波文庫 モンテーニュ(1533-1592)の『エセー』を読了しました。言わずと知れた「エッセイ」というジャンルのもととなった作品です。ただ、内容としては日常的な随想というよりは、政治、社会、詩に関するテーマが多く、…

ウィリアム・シェイクスピア『テンペスト』

ウィリアム・シェイクスピア 小田島雄志訳 『テンペスト』 白水Uブックス ウィリアム・シェイクスピア(1564-1616)の『テンペスト』を読了しました。以前「あらし」という邦題で新潮文庫にて読んだ記憶があるのですが、それ以来の読書となります。昔に読ん…

カート・ヴォネガット『スラップスティック』

カート・ヴォネガット 浅倉久志訳 『スラップスティック』 ハヤカワ文庫 カート・ヴォネガット(1922-2007)の『スラップスティック』を読了しました。1976年に発表された長編小説です。本書では、主人公であるウィルバー(プロローグにはめ込まれた「枠」を…

チャック・パラニューク『ファイト・クラブ』

チャック・パラニューク 池田真紀子訳 『ファイト・クラブ』 ハヤカワ文庫 チャック・パラニューク(1962-)の『ファイト・クラブ』を読了しました。デヴィッド・フィンチャー監督のもとブラッド・ピットが主演して大ヒットした映画については、私は未視聴だ…

ヘニング・マンケル『背後の足音』

ヘニング・マンケル 柳沢由実子訳 『背後の足音』 創元推理文庫 ヘニング・マンケル(1948-2015)の『背後の足音』を読了しました。刑事ヴァランダーを主人公とするシリーズ小説の第七作目にあたる本書は、本国スウェーデンでは1997年に刊行されています。私…

L.A.ポール『今夜ヴァンパイアになる前に【分析的実存哲学入門】』

L.A.ポール 奥田太郎・薄井尚樹訳 『今夜ヴァンパイアになる前に【分析的実存哲学入門】』 名古屋大学出版会 L.A.ポールの『今夜ヴァンパイアになる前に【分析的実存哲学入門】』を読了しました。著者は、本書カバー裏に記された略歴によれば、ノースカロラ…

大江健三郎『「自分の木」の下で』

大江健三郎 『「自分の木」の下で』 朝日文庫 大江健三郎の『「自分の木」の下で』を読了しました。1999年から2000年にかけてのベルリン自由大学で講義を行っていた時代に、現地の日本人学校で子どもたちに話して聞かせたという文章が基になったという「なぜ…

スチュアート・ダイベック『シカゴ育ち』

スチュアート・ダイベック 柴田元幸訳 『シカゴ育ち』 白水Uブックス スチュアート・ダイベック(1942-)の『シカゴ育ち』を読了しました。文学研究者で翻訳家でもある柴田氏が「これまで訳した中で最高の一冊」と述べている作品(それがいつの時点のことな…

スティーヴン・キング『IT』

スティーヴン・キング 小尾芙佐 『IT』 文春文庫 スティーヴン・キング(1947-)の『IT』を読了しました。二度にわたって映画化もされた、文庫本にして四巻の分量となる大作ですが、内容的にもキングの代表作と呼ぶのに相応しい内容となっています。27年前の…

ハンス=ヨアヒム・シェートリヒ『ヴォルテール、ただいま参上!』

ハンス=ヨアヒム・シェートリヒ 松永美穂訳 『ヴォルテール、ただいま参上!』 新潮社 ハンス=ヨアヒム・シェートリヒ(1935-)の『ヴォルテール、ただいま参上!』を読了しました。旧東ドイツ出身の作家であるシェートリヒの歴史小説作品です。フランスの思…

シンクレア・ルイス『本町通り』

シンクレア・ルイス 斎藤忠利訳 『本町通り』 岩波文庫 シンクレア・ルイス(1885-1951)の『本町通り』を読了しました。セオドア・ドライサーやウィル・キャザーよりは10歳ほど年下で、そしてフィッツジェラルドやヘミングウェイよりは10歳ほど年上という世…

チャペック『ロボット(R.U.R.)』

チャペック 千野栄一訳 『ロボット(R.U.R.)』 岩波文庫 カレル・チャペック(1890-1938)の『ロボット(R.U.R.)』を読了しました。チェコの作家であるカレル・チャペックが著したあまりにも有名な戯曲作品で、本作品が「ロボット」という言葉の由来になっ…

『オルラ/オリーヴ園 モーパッサン傑作選』

太田浩一訳 『オルラ/オリーヴ園 モーパッサン傑作選』 光文社古典新訳文庫 『オルラ/オリーヴ園 モーパッサン傑作選』を読了しました。光文社古典新訳文庫で刊行されているモーパッサンのオリジナル編集の短編作品集です。後期の作品の中かからセレクトさ…

カルヴィーノ『魔法の庭・空を見上げる部族 他十四編』

カルヴィーノ 和田忠彦訳 『魔法の庭・空を見上げる部族 他十四編』 岩波文庫 イタロ・カルヴィーノ(1923-1985)の『魔法の庭・空を見上げる部族 他十四編』を読了しました。カルヴィーノの初期短編集『魔法の庭』に五編の短編作品を追加した作品集です。カ…

ジェイムズ・エルロイ『LAコンフィデンシャル』

ジェイムズ・エルロイ 小林宏明訳 『LAコンフィデンシャル』 文春文庫 ジェイムズ・エルロイ(1948-)の『LAコンフィデンシャル』を読了しました。『ブラック・ダリア』に始まる「暗黒のL.A.」四部作の第三作目に当たる作品なのですが、私が読むことになった…

我孫子武丸『腐食の街』

我孫子武丸 『腐食の街』 双葉文庫 我孫子武丸の『腐食の街』を読了しました。古本屋でふと手に取った本書ですが、原著の刊行は1995年で、「近未来SF」と紹介されることのある本書の粗筋は、2022年の現在にあって何とも現代的な感じがして、面白く読むことが…

アンドレイ・サプコフスキ『ウィッチャーⅡ 屈辱の刻』

アンドレイ・サプコフスキ 川野靖子訳 『ウィッチャーⅡ 屈辱の刻』 ハヤカワ文庫 アンドレイ・サプコフスキ(1948-)の『ウィッチャーⅡ 屈辱の刻』を読了しました。ポーランドの人気ファンタジー作品の長編第二作目です。作品内の世界情勢が大きく動き出す契…

トニ・モリスン『パラダイス』

トニ・モリスン 大社淑子訳 『パラダイス』 ハヤカワ文庫 トニ・モリスン(1931-2019)の『パラダイス』を読了しました。1993年のノーベル賞受賞後に初めて発表された作品が本書なのですが、層を成す厚みのある語りと緊密な構成が特徴の大作です。そして、一…

大江健三郎『M/Tと森のフシギの物語』

大江健三郎 『M/Tと森のフシギの物語』 講談社文庫 大江健三郎の『M/Tと森のフシギの物語』を読了しました。1986年に刊行された本書は、1979年に発表された『同時代ゲーム』を平易な言葉で語り直した作品であるとされていますが、作者が生まれ育った四国の…

マルクス エンゲルス『共産党宣言』

マルクス エンゲルス 大内兵衛・向坂逸郎訳 『共産党宣言』 岩波文庫 マルクス(1818-1883)とエンゲルス(1820-1895)による『共産党宣言』を読了しました。「ヨーロッパに幽霊が出る」という有名なフレーズで始まる『共産党宣言』ですが、これまでの社会の…

サルマン・ラシュディ『真夜中の子供たち』

サルマン・ラシュディ 寺門泰彦訳 『真夜中の子供たち』 岩波文庫 サルマン・ラシュディ(1947-)の『真夜中の子供たち』を読了しました。本書の主人公であるサリーム・シナイと同じく1947年にインドのボンベイで生まれたラシュディは(ただしその日時につい…

『対訳 ブラウニング詩集―イギリス詩人選(6)』

富士川義之訳 『対訳 ブラウニング詩集―イギリス詩人選(6)』 岩波文庫 『対訳 ブラウニング詩集―イギリス詩人選(6)』を読了しました。19世紀に活躍したイギリスの詩人ロバート・ブラウニング(1812-1889)の作品が、英語と日本語の対訳形式で40作品収録…

ピエール・ルメートル『わが母なるロージー』

ピエール・ルメートル 橘明美訳 『わが母なるロージー』 文春文庫 ピエール・ルメートル(1951-)の『わが母なるロージー』を読了しました。カミーユ・ヴェルーヴェン警部を主人公とする作品は三作品で完結していたはずなのですが、いわば番外編のようなかた…

ロマン・ロラン『ベートーヴェンの生涯』

ロマン・ロラン 片山敏彦訳 『ベートーヴェンの生涯』 岩波文庫 ロマン・ロラン(1866-1944)の『ベートーヴェンの生涯』を読了しました。大河小説『ジャン・クリストフ』の作者であるロマン・ロランは多くの伝記作品も残しているのですが、その代表作のひと…

ロバート・A・ハインライン『月は無慈悲な夜の女王』

ロバート・A・ハインライン 矢野徹訳 『月は無慈悲な夜の女王』 ハヤカワ文庫 ロバート・A・ハインライン(1907-1988)の『月は無慈悲な夜の女王』を読了しました。ヒューゴー賞を受賞したハインラインの代表作のひとつとされる長編小説で、原題は“The Moon …

クリストファー・プリースト『逆転世界』

クリストファー・プリースト 安田均訳 『逆転世界』 創元SF文庫 クリストファー・プリースト(1943-)の『逆転世界』を読了しました。イギリスの作家で一般的にはSFジャンルに分類されるプリーストですが、いわゆる主流文学の読み手からも人気の作家であるよ…

スティーヴン・キング『ダークタワー Ⅲ 荒地』

スティーヴン・キング 風間賢二訳 『ダークタワー Ⅲ 荒地』 角川文庫 スティーヴン・キング(1947-)の『ダークタワー Ⅲ 荒地』を読了しました。シリーズを最後まで読み切るというタスクをこなすこと自体が目的となりつつある読書ですが、中だるみの気持ちが…

有栖川有栖『カナダ金貨の謎』

有栖川有栖 『カナダ金貨の謎』 講談社文庫 有栖川有栖の『カナダ金貨の謎』を読了しました。ドラマシリーズ「刑事コロンボ」などでもお馴染みのミステリー作品の形式の一つである倒叙物の表題作をはじめとして、作者らしい本格ミステリが並ぶ短編集です。 …

阿部和重『インディヴィジュアル・プロジェクション』

阿部和重 『インディヴィジュアル・プロジェクション』 新潮文庫 阿部和重の『インディヴィジュアル・プロジェクション』を読了しました。学生時代に読んで以来のことなので、何年ぶりになるのでしょうか。スパイ私塾に所属した過去を持つオブセッションに囚…

J・S・ミル『功利主義』

J・S・ミル 関口正司訳 『功利主義』 岩波文庫 J・S・ミル(1806-1873)の『功利主義』を読了しました。政治哲学や論理学の分野で歴史に名を残すミルですが、ベンサムが創出した功利主義の論者としてもよく知られています。ミルが功利主義をどのように擁護し…