文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

カルヴィーノ『むずかしい愛』

カルヴィーノ 和田忠彦訳

『むずかしい愛』 岩波文庫

 

20世紀のイタリアを代表する作家であるイタロ・カルヴィーノ。昔読んだことがあるのはたしか『不在の騎士』で、作家に対するイメージは「寓話性の強い小説を書く人」というもの。

 

本書は短編集で、収録された12篇はすべて「○○の冒険」というタイトルで統一されている。「ある兵士の冒険」は、汽車の中で他の席が空いているのにわざわざ自分の隣に腰を下ろした女性の思惑を想像して、休暇中の若い兵士があれこれ煩悶するというストーリー。「ある海水浴客の冒険」では、海の中でいつの間にか下着がなくなってしまった女性が、どのように窮地を脱するべきかと思案をめぐらせる。

 

どこにでもありそうな日常の中から、少しずつ異質な場所へとスライドしていく人たちの心情を描いた佳品で、面白く読むことができました。他の作品もどんどん読んでみたいなと思うわけですが、そのうちにドハマりしてしまうのかもしれません。

 

【満足度】★★★☆☆