文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

レベッカ・ブラウン『体の贈り物』

レベッカ・ブラウン 柴田元幸

『体の贈り物』 新潮文庫

 

現代アメリカの作家であるレベッカ・ブランの『体の贈り物』を読了。11の作品からなる連作短編小説集で、1作あたりは日本語の文庫本で15〜30ページほどとかなり短い。仕事を終えた一日の隙間で、一気に読み進むことができました。

 

主人公はホームケア・ワーカーとして、エイズ患者をはじめとする重い病に侵された人の身の回りの世話をしています。本書のなかでは、その日々を通じて主人公が見たこと、聞いたこと、感じたことが、静かではあるが確かな筆致で語られています。

 

「○○の贈り物」(原題では“The Gift of ...”)というタイトルで統一された短い11の作品群。○○の部分には「汗」や「肌」、「飢え」や「死」、「希望」や「悼み」などの言葉が挿入されています。人間を形作るそれらの要素は、断片的に切り取られることを通じて、人間の物質的な存在性、人格的な存在性、社会的な存在性を感じさせてくれるかのようです。

 

親や家族の介護という問題が避けては通れなくなっている私たちにとって、そうした意味でも様々な気付きのある作品だと思います。

 

【満足度】★★★★☆