文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

レイモンド・カーヴァー『愛について語るときに我々の語ること』

レイモンド・カーヴァー 村上春樹

『愛について語るときに我々の語ること』 中古公論新社

 

レイモンド・カーヴァー(1938-1988)の全集第2巻である『愛について語るときに我々の語ること』を読了。この巻はもうあまり流通していないのか、近隣の書店はもちろん、インターネットでも販売されているのを見つけられなかったのですが、少し離れた町の本屋に在庫があることを知って、ちょっとした観光ついでにその本屋を訪れて購入しました。随分と人が多い本屋で、割と古い作りの店内にぎっしりと人が詰まっていました。海外文学の棚の前にも比較的たくさんの人がいて、店員さんをつかまえて在庫の確認をしている人の姿もありました。地元ではあまり見かけない風景。

 

閑話休題。本書に収められた短編のいくつかは以前に文庫編集版でも読んだことがあったのですが、相変わらず印象が強いのは「出かけるって女たちに言ってくるよ」という作品。大学時代に夜中にこの作品を読んでいて、切り詰められた言葉で提示されるラストの文章に衝撃を受けたことを今でもよく覚えています。これも大学時代に深夜のテレビで、カーヴァーのいくつかの短編をもとに群像劇ふうに作られた『ショート・カッツ』という映画でも、そのほとんどの映像は忘れてしまいましたが、唯一記憶に残っているのはこのラストシーンの舞台になった荒涼とした山道の光景でした。

 

カーヴァー全集の読みなおしは、第1巻『頼むから静かにしてくれ』、第3巻『大聖堂』に続いて、これで3巻目となりました。個人的にはこのブログを書き始める前に読了した、第1巻の少し雑多な感じのする読み心地がなかなか良かったという感想なのですが。せっかくなので、これまで触れたことのないカーヴァーの詩やエッセイも含めて、全集を読み切ろうと考えています。

 

【満足度】★★★★☆