文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

ブッツァーティ『神を見た犬』

ブッツァーティ 関口英子訳

『神を見た犬』 光文社古典新訳文庫

 

ディーノ・ブッツァーティ(1906-1972)の『神を見た犬』を読了しました。ブッツァーティはイタリアの作家・画家で、彼の作品を読むのは初めてのこと。しかし、読んでいる最中はずっと「どこかで読んだことがあるような気がする」と感じていました。本書の解説によるとブッツァーティは「イタリアのカフカ」と称されていたようですが、どちらかというと星新一に近いような気がします。

 

有名な作品とされる「コロンブレ」や「七階」などの作品が印象に残りましたが、20世紀に生きた人の宿命でもあるのか、神や聖職者をアイロニックに描く作品群もおもしろく感じられました。「驕らぬ心」など結末は想像できるものなのですが、ラストシーンで二人が手を取り合って涙を流す場面には、皮肉ともつかぬ感動ともつかぬ何とも言い難い感情を覚えさせられます。

 

タタール人の砂漠』などの彼の長編作品や、あるいは彼の描いた絵なども見てみたいと感じるのですが、最近どうにも仕事が忙しくなってきて読書に割ける時間が減ってしまっています。辛抱しながら少しずつ時間を見つけていきたいものです。

 

【満足度】★★★★☆