文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

ポオ『黒猫・モルグ街の殺人事件 他五篇』

ポオ 中野好夫

『黒猫・モルグ街の殺人事件 他五篇』 岩波文庫

 

エドガー・アラン・ポオ(1809-1849)の『黒猫・モルグ街の殺人事件 他五篇』を読了しました。大学時代だったか一度読んだことがあって、本棚の奥にまったく同じ本がしまわれていることにも気付かず、あらためて本屋で手に取って読むことになりました。

 

推理小説好きでもある私にとっては、幾度となく言及されて目にしてきた有名な作品ばかりが収められた短編集です。ゴシックホラーの「黒猫」をはじめとして、探偵小説の嚆矢とされる「モルグ街の殺人事件」、「マリ・ロジェの迷宮事件」、「盗まれた手紙」では名探偵デュパンが登場して、分析的能力を駆使した推理でもって難事件を解決に導いていきます。

 

読者の前に意外な犯人を提示してみせる「モルグ街の殺人事件」は間違いなく名作だと思うのですが、その続編として書かれた「マリ・ロジェの迷宮事件」はお世辞にも分析能力が発揮されたとは思えない筆さばきで、「盗まれた手紙」になると一転して推理小説のお手本のような切れ味を見せてくれます。ポオはファンの多い作家だと思うのですが、私にとってはうまく“乗れない”作家でもあって、再読ということを置いておいても、あまりのめり込んで読むことはできませんでした。

 

今度はポオの詩を読んでみたいですが、暑さと忙しさのなかで何もできない日々が続いてしまっています。

 

【満足度】★★★☆☆