文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

イアン・マキューアン『贖罪』

イアン・マキューアン 小山太一

『贖罪』 新潮文庫

 

イアン・マキューアン(1948-)の『贖罪』を読了しました。たしか大学時代だったと思うのですが、ブッカー賞を受賞した『アムステルダム』を読んで、何年か前に各種書評等でも話題になった『未成年』を読み、今回がマキューアンの読書三冊目ということになります。秋晴れの空、運転免許センターでの待ち時間に本を読み進めます。

 

全体は三部構成になっていて、第一部では本書のストーリーの核を成している事件が起こるまでの経過が、三人称多視点で描かれます。そして第二部では事件のその後が、さらに第三部ではひとつの「収束」が描かれるわけですが、その第三部の末尾に付された署名にハッとさせられながら、エピローグを迎えて読書は終わることになります。緊密でよくできた構成だと思います。

 

よくできた作品だなと思いながらも、私がなぜかマキューアンの作品に「はまらない」のはなぜなのだろうかと考えてみるのですが、なかなか適切な回答が見つかりません。登場人物の誰にも強く感情移入できないからなのか、単なる好みの問題なのか…。こうした言い方が適切なのかどうか解りませんが、マキューアンの作品はゴシップ小説の極致ともいえるもので、そのうますぎる筆致が鼻につくということなのでしょうか。

 

とはいえ、これからも引き続き読み続けていく作家ではあり続けると思います。いつか彼の作品に「はまる」ときは来るのでしょうか。

 

【満足度】★★★☆☆