文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

マーク・トウェイン『マーク・トウェイン短編集』

マーク・トウェイン 古沢安二郎訳

マーク・トウェイン短編集』 新潮文庫

 

マーク・トウェイン(1835-1910)の『マーク・トウェイン短編集』を読了しました。本書は1961年に新潮文庫で出版されたものですが、新訳で読んだ『ジム・スマイリーの跳び蛙』といくつかの作品が重複しています。具体的には(本書に収録されたタイトルにしたがって言えば)「私が農業新聞をどんなふうに編集したか」、「噂になったキャラベラス郡の跳ぶ蛙」、「実話」の三作品ですね。

 

本書のおよそ半分の分量をなす「ハドリバーグの町を腐敗させた男」は短編よりも中編と呼んだ方がしっくりとくる長さの作品です。人間の欲得というものをシニカルに描いた作品ですが、肩ひじ張って読むのではなく、読者を楽しませようと工夫をこらしているマーク・トウェインストーリーテリングに素直に身を任せるのが正解なのではないかと思います。巻末に付された町の「印章」の変更のくだりも気が利いています。

 

今年も残すところあと二ヶ月となりました。今年は「これを読んだ」という大作の読書が少なかったような気がしますが、残りの日々でこの状況に変化はあるでしょうか。

 

【満足度】★★★☆☆