文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

チョーサー『完訳 カンタベリー物語』

チョーサー 桝井迪夫訳

『完訳 カンタベリー物語』 岩波文庫

 

チョーサー(1343頃-1400)の『カンタベリー物語』を読了しました。イギリスの詩人ジェフリー・チョーサーにより書かれた物語集で、歴史の授業にも登場しますね。言い換えると歴史の授業以外ではなかなか触れられることがない作品であるとも言えるかもしれません。ほぼ同時代に活躍したイタリアの詩人であるボッカッチョの『デカメロン』から影響を受けて書かれたとも言われているようです。カンタベリー大聖堂への巡礼の途中、身分も職業も性別も異なる様々な人々が、宿の主人に促されるままに順番に話を語っていくというスタイルで描かれています。

 

一つひとつの挿話についていえば、面白い話もあればそうでない話もあり、高貴な話もあれば下世話な話もあります。その構成の妙を楽しむべき作品なのかもしれません。チョーサー自身も登場人物の一人として話を語りだすのですが、そんな話は時間の無駄だと宿の主人から罵られてて別の話を始めたりするなど、奇妙にシュールな部分もあります。次々と夫を取り換える「バースの女房」などキャラクター性豊かな人物が、自由な思想を展開したりもします。難しい話は研究者の方々に任せて、私たちはこの物語をありのままに受容すればよいのではないでしょうか。

 

日曜日出勤の仕事の合間に、車の中で背もたれを倒して本を読みふけっていました。平和な日。

 

【満足度】★★★☆☆