文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

ソール・ベロー『この日をつかめ』

ソール・ベロー 大浦暁生訳

『この日をつかめ』 新潮文庫

 

ソール・ベロー(1915-2005)の『この日をつかめ』を読了しました。ソール・ベローはユダヤアメリカ人作家の代表格として語られる作家で、1976年にはノーベル文学賞を受賞しています。しかし最近の日本では手に入りやすい翻訳書が存在しないような状況で、本書も古本屋で手に取ったボロボロの新潮文庫でした。どんな作家なのかと楽しみに読んだのですが。

 

本書の粗筋紹介には「人生の峠を既に越えたかに見える一人の男の危機的な一日を追いながら、窮極の状態における人間存在の意味を問う」とあります。主人公のウィルヘルムはかつて映画業界に所属するものの、現在では職もなくホテル暮らしを続けながら、未来の見えない日々を送っています。別れた妻子から請求された養育費の支払いのために父親にお金の無心を行い、さらには無謀な儲け話に一縷の望みを託して有り金をつぎ込みます。

 

彼が迎えることになる絶望を、何か“心の開放”のようにして描いてみせる筆致は、私にはまるでピンと来なかったというのが正直なところ。時代性の問題なのか、宗教性の問題なのか、それすらもよく解りません。ソール・ベローの他の作品も読んでみようとは思っているのですが…

 

【満足度】★★☆☆☆