伊藤邦武
伊藤邦武の『プラグマティズム入門』を読了しました。パース、ジェイムズ、デューイという古典的プラグマティストから、クワイン、ローティー、パトナムといったネオ・プラグマティスト、さらには21世紀における最新のプラグマティストたちの動向までを概観する目配りの効いた入門書です。
本書では多くの思想家が紹介されていますが、一口に「プラグマティズム」といっても、それぞれの哲学者の思想はオリジナルなものです。とりわけ数学や論理学の研究を主戦場とするパースと、心理学分析を得意として宗教的経験をはじめとする神秘思想にも造詣の深いジェイムズとは、一見するとまったく異なった思想的スタイルを持った哲学者のように見えます。そのそれぞれの独自性をきちんと描き出しながら両者のプラグマティズムの核になる部分を取り出してみせる著者の手筋は、まったくもってすごいものだと唸らされます。
著者はローティに関してはあまり高く評価していないのではないかというのが、一読してみての感想です。パースの思想を評価しないローティに対して、21世紀のプラグマティズムの思想がパース再評価に向かっているという本書のストーリー立てがそのような読みを導くのでしょう。
【満足度】★★★★☆