ゴールズワージー 法村里絵訳
『林檎の樹』 新潮文庫
ゴールズワージー(1867-1933)の『林檎の樹』を読了しました。イギリスの作家で1932年のノーベル文学賞受賞作家でもあるゴールズワージーですが、その作品を読むのは初めてのこと。本作は川端康成が愛したことでも知られる作品のようですが、代表作といわれているのは『フォーサイト家物語』三部作とのこと。
上流階級の青年と農場の娘との間の身分違いの悲恋を描いた作品で、題材自体には何の目新しさもないのですが、なぜか心惹かれてしまうのが不思議です。
「心に浮かんだのはただひとつ、ケンブリッジ時代に知り合った女の子のことだった。一歩まちがっていたら、あの子と……わかるだろう? 深入りしなくてよかったと、あのとき思ったんだ」
友人が苦々しく語る科白が主人公アシャーストの中で何度も反芻される様は、リアルというか何というか、ひどく印象に残るのでした。
【満足度】★★★★☆