文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

スティーヴ・エリクソン『Xのアーチ』

ティーヴ・エリクソン 柴田元幸

『Xのアーチ』 集英社文庫

 

ティーヴ・エリクソン(1950-)の『Xのアーチ』を読了しました。『ルビコン・ビーチ』や『黒い時計の旅』などで知られる現代アメリカ作家のエリクソンですが、彼の作品を読むのは初めてのことです。本書は1993年に刊行され、1996年に邦訳が出版された後、2016年のエリクソンの来日を機に文庫化されるに至ったとのこと。

 

第三代アメリカ大統領であり、アメリカ独立宣言の起草者であるトマス・ジェファーソン奴隷制廃止論者でもあったトマスの女奴隷であるサリーがトマスの愛人でもあったという通説をもとに、新しい「自由」の幕開けを迎えるフランス革命直前のパリを起点として、奇妙に歪んでいく世界を描いた作品です。「永劫都市」なる場所で、愛によって焚きつけられて、ダメージを負っていく人々の姿は幻想的でもあり、リアルでもあります。

 

自分がこの作品の展開をうまく受け止められているかといえば、あまりそうは言えなくて、そうではないとしても何かしらのずっしりした手応えのようなものを受け取ることができたかといえば、それもやはりそうではないと答えざるを得ません。なぜなのかは良く解らないのですが。

 

【満足度】★★★☆☆